恋とキスは背伸びして
「そのチャームを大切にしてくれているのは嬉しい。けど、失くした時にここまで悲しむ君のことが心配だ。形あるものは必ずいつかは壊れる。失くしたり、壊れたりした時に、仕方ないって諦めてくれないと」

そう言って美怜の頬を大きな手のひらで包むと、親指でそっと涙を拭う。

「このチャームのせいで、こんなに君を泣かせたくない」

切なげな表情でそう言う成瀬に、美怜はキュッと胸が締めつけられた。

「でも私にとってこのバラのチャームは、大切な宝物だしお守りなんです。もう二度と失くしたりしません。壊れないように大切に保管します。本当はずっと身に着けていたいけど…」

小さく呟いてうつむく美怜を、成瀬は優しく両腕の中に閉じ込めた。

「…本部長?」
「そんな不安そうな顔しないで。心配でたまらなくなる」
「大丈夫です。これからはおうちで眺めてパワーを充電して、外では一人でがんばります。今までだってそうしてきたんですから」

涙で潤んだ瞳で笑ってみせる美怜を、たまらず成瀬は胸にギュッと強く抱き寄せる。

美怜の頭をなでると、その髪にそっと口づけた。

「俺ではだめか?」
「え…?」
「俺では君の心の支えになれない?辛い時には抱きしめて、君の心を癒やしたい。不安で冷たくなった心を温めたい。傷つかないように、君をこの手で守りたい。君がずっと幸せでいられるように、どんな時もそばにいて、君を笑顔にしたい。俺では、だめか?」
「本部長…」

吸い込まれるような漆黒の瞳で真っ直ぐに見つめられ、美怜は思わずうつむく。

成瀬の胸に手を添えると、そっと身体を起した。

「あんまり優しくしないでください。あなたの腕は温かくて大きくて、ホッと安心できて、心地良くて、守られているみたいに心強くて…。私、ここから離れられなくなります」
「離れなくていい。離さないから」
「本部長…」

美怜が涙を目に一杯溜めて見上げると、成瀬は優しく笑って髪をなで、美怜の頭を自分の胸に抱き寄せた。

「少しずつでいい。俺のそばで俺に心を寄せてくれる?君の気持ちを、ちゃんと待つから」
「…はい」
「ありがとう。俺は君が心から好きだよ、…美怜」

ポロポロと涙をこぼす美怜に笑いかけ、成瀬は身を屈めると、そっと美怜の頬にキスをする。

少しだけ身体を硬くして緊張する美怜を、成瀬はもう一度優しく胸に抱き寄せた。
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