恋とキスは背伸びして
「美怜、お待たせ」

翌日の夜。
ミュージアムの裏口まで車で迎えに来た成瀬が、待っていた美怜に笑顔で声をかける。

「こんばんは。迎えに来てくださってありがとうございます」
「何を言う。俺が誘ったんだし、当たり前だ。さ、どうぞ乗って」
「はい」

助手席に座ると、成瀬はそっとドアを閉めてから運転席に回った。

「それで、どこに行きたい?」
「えっと、色々考えたんですけど」
「うん、どこ?」
「あの、よかったら私のマンションで食べませんか?」

ピキッと成瀬は、片手をハンドルに載せる途中で固まる。

「もしもし?本部長?」
「はっ、ごめん。えっと、何だって?」
「はい、あの。本部長、お仕事でお疲れでしょうし、私の部屋でゆっくりするのはどうかと思いまして。大した料理はできないんですけど、もしよかったら」
「よよ良いです。もちろんです」
「本当に?じゃあ、私のマンションまでお願いします」
「か、かしこまりました。出発いたします」

カチンコチンでギアを操作する成瀬に、大丈夫かな?と美怜は心配になる。

余計な話はしない方がいいと、ずっと黙ったままマンションに向かった。
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