恋とキスは背伸びして
「美怜」
「はい」
「夢かと思った」
「え?何がですか?」
「美怜が俺の頬にキスしてくれた時」

美怜の顔が一気に真っ赤になる。

「あの、それは、その。あの時は思わず…。だって暗い部屋に一人で取り残されると、怖くって」
「ええ?!だから引き留めようと必死だったってこと?」
「はい。だって一人暮らしの部屋って、夜は怖くて」
「怖いって二回も言ったな?」

成瀬はいきなり美怜の身体をギュッと抱きしめた。

「え?あの、本部長?」
「まだ伝わらない?俺がどんなに美怜を好きか。可愛くて愛しくて、好きで好きでたまらないのに」

もどかしさに胸が傷んだ時、美怜がそっと身体を離した。

「私の気持ちも、まだ伝わってませんか?」

えっ…と、成瀬は美怜を見つめる。
美怜も真っ直ぐに成瀬を見つめ返して言葉を続けた。

「大好きな人が去って行くのが寂しかったんです。楽しかった時間が終わって、暗い部屋に取り残されて心細くて…。もう会えないのかなって思ったら、離れるのが怖くなって。それくらい、あなたのことが好きだから」
「美怜…」

成瀬は嬉しさに胸を打ち震わせる。
信じられない程の幸せが湧き上がってきた。

もう一度、腕の中にしっかりと美怜を抱きしめる。
< 195 / 243 >

この作品をシェア

pagetop