恋とキスは背伸びして
「え、二組で旅行?」

梅雨も明けて夏の日差しが強くなってきたある日。

ミュージアムにルミエール ホテルの家具を選びに来た友香とランチをしていた美怜は、友香の言葉に思わず聞き返した。

「二組って、友香ちゃんと卓と…?」
「はい。美怜さんと成瀬さんです」
「そそ、そう」

ズバッと名前を出されて、美怜はうつむく。

「あら?大丈夫ですか、美怜さん。顔が赤いですけど」
「いや、ほら。暑いからねー。すっかり夏だね」
「ほんとに熱々ですね。ふふっ」
「友香ちゃん?暑いの漢字が違うんじゃない?」
「合ってますよー」

ニコニコと楽しそうな友香は、きっと卓と上手くいっているのだろう。

うむ。ラブラブで何より、と美怜はひとりごつ。

「それでね、美怜さん」

カルボナーラをくるくるとフォークに巻きつけながら、友香が話を戻した。

「私、どうしても卓さんと旅行に行きたくて。でも卓さんが、結婚前に友香と宿泊はしないって頑なに言うんです。もう…、両親にも挨拶しに来てくれたから、大丈夫だって言ってるのに」

拗ねたように頬を膨らませる友香に、可愛いなと目を細めてから、美怜は一気に頭の中がパンクした。

「え?卓、友香ちゃんと泊まりはだめって言うの?そんな古風な考え方なんだ。卓、それだけ友香ちゃんのことが大事なんだな。いや、えっと。結婚前?!って、もう結婚の話もしてるの?ええー?!卓、もう既に友香ちゃんのご両親に挨拶に行ったの?」
「はい。私の自宅に来て、両親に頭を下げてくれました。父も母も大喜びで、卓さんの気が変わらないうちに、さっさとお嫁にもらってもらいなさいって、もう家から追い出されそうな勢いです。父なんて、大安吉日のルミエールの挙式を勝手に予約するし。あの調子だと、列席者の招待リストももう作ってるかも」

は、はあ…と美怜は気の抜けた返事をする。

「という訳なんです、美怜さん」
「えっと、どういう訳だっけ?」
「ですから、私も両親も大丈夫なのに、卓さんが友香と二人の旅行はだめって。美怜さん達と一緒に行って、部屋も私が美怜さんと、卓さんが成瀬さんと同じ部屋に泊まるならいいって」

なるほど、とようやく美怜は納得した。

「お願い!美怜さん。一緒に行っていただけませんか?」

両手を合わせて上目遣いに見つめられ、美怜はまたしてもその可愛らしさに目を奪われる。

「こんなに可愛くお願いされたら、断れないね」
「えっ!じゃあ、いいですか?」
「うん。本部長にも聞いてみる」
「わー!やったー!お願いします。また四人で旅行に行けるのを、とっても楽しみにしています」

友香の笑顔に目を細めつつ、美怜も旅行を想像して楽しみになってきた。

(早速今夜、本部長に電話してみよう。いいよって言ってくれるといいな)

そう思いながら、美怜も笑顔を浮かべた。
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