恋とキスは背伸びして
ミーティング
翌週の金曜日。
ミュージアムの閉館後に、チームメンバー全員が集まるミーティングが行われた。
「はい、じゃあ始めようか。今日は本社から成瀬本部長も参加してくださる。よろしくお願いします」
入江に続いて、よろしくお願いいたします!とメンバーが声を揃えると、成瀬も頭を下げた。
「こちらこそ、よろしくお願いします。部外者ですが、見学させてください」
すると相田 佳代が口を開く。
「あら。同じ会社なのに部外者も何もありません。お気づきの点やご意見など、どんどんおっしゃってくださいね。とてもお偉い方でいらっしゃるとは思いますが、私達もいつも通りやらせていただきます。失礼があったら申し訳ありません」
「いえ、とんでもない。どうぞお気遣いなく」
そしてミーティングが始まったのだが、オフィスではなく、ミュージアムのエントランスで立ち話、といった感じで始まったことに、まず成瀬は驚く。
(まさかこのまま、井戸端会議みたいに進めるのか?)
そう思っていると、再び佳代が話し始めた。
「えーっと、じゃあいつものようにみんなで館内を歩きながら話しましょう。思いついたことがあったら教えてね」
はーい、と返事をして皆は歩き始めた。
「あ、そう言えばエントランスのゲート、何度か動作不良起こしてました。すぐに復旧しましたが、一度しっかり点検した方がいいかもしれません」
「了解。何番ゲート?」
「ここです、二番ゲート。今はスムーズですけど、お子様には反応しなくて」
「そうなんだ。美怜、ちょっとちっちゃくなって通ってみて」
美怜は、ええー?と言いながら渋々二番ゲートの前まで行き、中腰になる。
「ちっちゃくって、これくらいですか?」
「んー、もうちょっと」
「こ、これくらい?」
「そう。それで前に進んでみて」
「くー!きつい」
両腕を身体の前で縮めて、よちよちとひよこのように歩く美怜に、皆はあはは!と笑い出す。
「美怜、何それー?可愛いんだけど」
「何それって、やれって言ったの先輩じゃないですか。あー、太ももがプルプルする」
ゲートのギリギリ手前まで来ると、美怜はIDカードをパネルにかざす。
ピコン!と音は鳴るが、ゲートは開かない。
「あれ?おかしいな」
立ち上がってみると、今度はすぐに開いた。
「ほんとだ。背が低いと反応悪いんだね」
「そうなんです。なので、お子様は二番ゲート以外を通っていただくように誘導してください」
「了解です」
皆で頷いて、先へと進む。
会社の歴史の展示まで来ると、美怜が思い出したように、はいと手を挙げた。
「なに?美怜」
「先日この展示をご紹介した時に、創業時の従業員数は十五人って説明したら、今は何人?と聞かれました。現在は正社員二万八千人前後ですってお答えしましたけど、そのあとにうちのホームページを見たら、正社員約三万人って記載に変わってたんです。今後は約三万人で統一した方がいいでしょうか?」
メンバーが一斉に入江課長を振り返ると、入江は頷く。
「そうだね。ホームページに合わせて統一しよう」
「はい」
皆は声を揃えてメモを取る。
(同じ広報部なのに伝えていないのか。今後ホームページの記載を変更したら、ミュージアムチームにも知らせるように言っておかないとな)
成瀬もメンバーから少し離れたところで手帳にメモをした。
ミュージアムの閉館後に、チームメンバー全員が集まるミーティングが行われた。
「はい、じゃあ始めようか。今日は本社から成瀬本部長も参加してくださる。よろしくお願いします」
入江に続いて、よろしくお願いいたします!とメンバーが声を揃えると、成瀬も頭を下げた。
「こちらこそ、よろしくお願いします。部外者ですが、見学させてください」
すると相田 佳代が口を開く。
「あら。同じ会社なのに部外者も何もありません。お気づきの点やご意見など、どんどんおっしゃってくださいね。とてもお偉い方でいらっしゃるとは思いますが、私達もいつも通りやらせていただきます。失礼があったら申し訳ありません」
「いえ、とんでもない。どうぞお気遣いなく」
そしてミーティングが始まったのだが、オフィスではなく、ミュージアムのエントランスで立ち話、といった感じで始まったことに、まず成瀬は驚く。
(まさかこのまま、井戸端会議みたいに進めるのか?)
そう思っていると、再び佳代が話し始めた。
「えーっと、じゃあいつものようにみんなで館内を歩きながら話しましょう。思いついたことがあったら教えてね」
はーい、と返事をして皆は歩き始めた。
「あ、そう言えばエントランスのゲート、何度か動作不良起こしてました。すぐに復旧しましたが、一度しっかり点検した方がいいかもしれません」
「了解。何番ゲート?」
「ここです、二番ゲート。今はスムーズですけど、お子様には反応しなくて」
「そうなんだ。美怜、ちょっとちっちゃくなって通ってみて」
美怜は、ええー?と言いながら渋々二番ゲートの前まで行き、中腰になる。
「ちっちゃくって、これくらいですか?」
「んー、もうちょっと」
「こ、これくらい?」
「そう。それで前に進んでみて」
「くー!きつい」
両腕を身体の前で縮めて、よちよちとひよこのように歩く美怜に、皆はあはは!と笑い出す。
「美怜、何それー?可愛いんだけど」
「何それって、やれって言ったの先輩じゃないですか。あー、太ももがプルプルする」
ゲートのギリギリ手前まで来ると、美怜はIDカードをパネルにかざす。
ピコン!と音は鳴るが、ゲートは開かない。
「あれ?おかしいな」
立ち上がってみると、今度はすぐに開いた。
「ほんとだ。背が低いと反応悪いんだね」
「そうなんです。なので、お子様は二番ゲート以外を通っていただくように誘導してください」
「了解です」
皆で頷いて、先へと進む。
会社の歴史の展示まで来ると、美怜が思い出したように、はいと手を挙げた。
「なに?美怜」
「先日この展示をご紹介した時に、創業時の従業員数は十五人って説明したら、今は何人?と聞かれました。現在は正社員二万八千人前後ですってお答えしましたけど、そのあとにうちのホームページを見たら、正社員約三万人って記載に変わってたんです。今後は約三万人で統一した方がいいでしょうか?」
メンバーが一斉に入江課長を振り返ると、入江は頷く。
「そうだね。ホームページに合わせて統一しよう」
「はい」
皆は声を揃えてメモを取る。
(同じ広報部なのに伝えていないのか。今後ホームページの記載を変更したら、ミュージアムチームにも知らせるように言っておかないとな)
成瀬もメンバーから少し離れたところで手帳にメモをした。