恋とキスは背伸びして
「美怜、やっと二人切りになれた」

ロビーに下りると卓達と別れ、成瀬は美怜の肩を抱いて歩きながら、優しく微笑む。

「ごめんなさい。友香ちゃんと子どもみたいにはしゃいでばかりで」
「いや、二人とも笑顔が可愛かったよ。いいな、友達同士って楽しそうで」
「本部長は?卓とどんな話を?」
「ん?色々、恋の先輩としての話を聞かせてもらった」

先輩?と、美怜は不思議そうに成瀬を見上げる。

「卓が先輩なの?」
「そうだよ。もう友香さんの実家に挨拶に行ったらしいからね」
「え、それは…」

いつか私の実家にも?と、美怜は心の中で呟く。

(本部長が私の両親に挨拶してくれるの?そしたら私も、本部長のご両親に…)

想像した途端に緊張感に包まれた。

(大丈夫かな?私。本部長とは釣り合わないって思われたらどうしよう)

「美怜?」
「え?はい」

ふいに呼ばれて、美怜は顔を上げる。

「時々ふと不安そうな顔をするけど、どうして?何が心配?」

立ち止まった成瀬にじっと瞳を覗き込まれて、思わず美怜はうつむいた。

成瀬はそんな美怜の手を引いて、人気のない大きな柱の後ろに回る。

「美怜。思ってることちゃんと伝えて」
「え?あの、別に何も」
「嘘だよ。俺が美怜の気持ちに気づけないとでも思ってる?話しても分からないって思うから話してくれないの?俺はそんなに頼りない?」
「そんなこと…」
「それなら話して。どんなことでもいいから。考え込まずにそのまま話して」

美怜は少し考えあぐねてから顔を上げた。
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