恋とキスは背伸びして
「美怜さん、お帰りなさい。成瀬さんも」

部屋に戻ると、リビングのソファでくつろいでいた友香と卓が笑顔で振り返る。

「ただいま」
「美怜さん、ショー見ましたか?」
「うん。とっても素敵だった」
「ですよね。明日はお部屋から見ようかな」
「それもいいね」

うっとりとした表情を見るからに、友香達もどうやら楽しいひとときを過ごせたらしい。

「美怜さん、お風呂にお湯張ってきますね。あ!そうそう。ここって温泉もあるんですって。明日は温泉に行きませんか?」
「えー、行きたい!」
「はい、ぜひ」

そう言うと友香は卓と成瀬に、今夜はこれで、おやすみなさいと挨拶して階段を上がる。

「じゃあ俺も風呂沸かしてきます。美怜、おやすみ」
「おやすみなさい」

卓も部屋を出て行くと、美怜は時計を確認する。

「もうこんな時間!お風呂に入ったら寝ますね。友香ちゃんとおしゃべりが止まらないかもしれないけど」
「ははは!それは間違いない。ほどほどにな」
「はい」

美怜はにっこり笑うと急に真顔になり、キョロキョロと階段と隣の部屋のドアを見比べる。

「どうかした?」

声をかける成瀬の肩に手を置くと、美怜は背伸びをして耳元でささやいた。

「おやすみなさい、隼斗さん」

チュッと成瀬の頬にキスをするとすぐさま身を翻し、トントンと階段を駆け上がる。

突然の可愛い鳩のささやきに、成瀬は顔を真っ赤にしたまま完全に固まっていた。
< 208 / 243 >

この作品をシェア

pagetop