恋とキスは背伸びして
他にも同じように確認事項を共有しながら、モデルルームコーナーまでやって来た。

それぞれのテーマに合わせた家具が並ぶ部屋が三つ並んでいる。

「えーっと、現在Aルームはナチュラル&シンプルをテーマにしたコーディネートで二ヶ月前から展示中です。Bルームは、ラグジュアリーをテーマに先月から展示。Cルームはシック&モノトーンをテーマに三ヶ月間展示しました。そろそろCルームを変更しませんか?」

賛成です!と次々手が挙がる。

「じゃあ次のテーマは何がいい?」
「うーん、ポップ&カラフルは?」
「いいね!それなら、子ども部屋の設定にする?」
「いいかも!」

メンバーはそれぞれ手にしたタブレットを開く。

「小学生の女の子なら、ガーリーシリーズかな?」
「もっと小さいお子様向けだと、ドリーミーシリーズはどう?」
「うんうん。子ども用の二段ベッドに幌を被せてトンネルみたいにして」
「天井には、この星のライトをたくさんつけるとか?」
「素敵!小さい女の子なら、やっぱりプリンセスよね。ふんわりした天蓋つきの真っ白なベッドにピンクのシーツ。壁にお花のライトをつける?それともジュエリーっぽく、カラフルなこのキラキラのライト?」
「いやーん、可愛い!」

まさにガールズトーク全開といった様子で、皆で顔を寄せ合い、タブレットを覗き込んでワイワイと盛り上がる。

「はーい、時間切れ。じゃあこのモデルルームに関しては、それぞれコーディネートを考えておいてね。次行きまーす」

佳代がその場を締め、皆も、はーいと返事をしてからデザイン体験のコーナーに移動する。

「夏休みも終わってお子様の来場も落ち着いてきたから、じっくり楽しめる企画を考えたいよね。何かいいアイデアある?」
「んー、今はパソコンでバーチャルの空間にインテリアコーディネートを考えてもらって、それを印刷したものを持ち帰っていただいてますよね。それを今度はよりリアルにしませんか?」
「例えば?」
「ミニチュアのドールハウスみたいな、ペーパークラフトはどうですか?壁紙はシールを選んで貼って、家具や小物は、好きなものをポリポリ切り取って組み立てる工作みたいにして、お気に入りのお部屋を作ってもらうんです」
「へえ、面白そう。家具の配置なんかも、個性が出て楽しめそうね」
「ペーパークラフトなら予算もクリアできそうかな?色んな種類を用意して選び応えがあるといいな」

皆は入江を振り返り、課長!予算の申請お願いしまーすと手を合わせる。

「はいはい。たんまりもらえるようにがんばるよ」

そう言ってから入江は腕時計に目を落とした。

「じゃあ今日はここまで。もう八時半だ。デートに行ってきなさい」
「ぶっ、課長。私達の中で彼氏がいるのなんてほんの数人なの、ご存知じゃないですか」
「じゃあコンペに行ってきなさい」
「課長、それを言うならコンパですよ。コンペなら仕事になっちゃいます」
「あはは!そうか。とにかくみんな、プライベートの時間も大切にしなさいよ」
「はーい。それでは、今日は解散!お疲れ様でした」

お疲れ様でした!と声を揃えて、皆はワイワイと賑やかにロッカールームに向かった。
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