恋とキスは背伸びして
「美怜、観覧車乗らないか?」
「観覧車?乗りたい!」
「よし、じゃあ行こう」

しっかりと腕を組んだまま、二人は園内の観覧車に向かう。

ゴンドラに乗ると、外からガチャンとドアを閉められ、二人だけの空間になった。

二人を乗せたゴンドラは、ゆっくりと夜の空を目指していく。

「観覧車なんて久しぶり。夜景がとっても綺麗」
「そうだな」

窓の外に広がる宝石箱のような煌めきに、美怜はうっとりと見惚れる。

そんな美怜を微笑ましく見ていた成瀬は、ふと真剣な表情で向き合った。

「美怜」
「はい」
「来月のお盆休み、美怜の実家に挨拶に伺いたい」

え…、と美怜は驚いたように成瀬を見つめる。

「挨拶って?」
「美怜のご両親に、結婚を前提に美怜とおつき合いをしていることの報告と、結婚のお許しをもらいに」
「そんな。私、もう二十五ですし、親の許可なんていりませんよ?」
「いや、だめだ。いくつになってもご両親は大切な娘である美怜のことが心配なはず。それに俺は美怜と九歳も離れている。安心してもらう為にも、きちんと挨拶したい」
「本部長…」

自分のことをそんなふうに大事に考えてくれていたことが嬉しくなり、美怜は胸がジンと熱くなった。

「それなら、私も本部長のご実家にご挨拶に伺います」
「え?俺はいいよ。いい歳のおじさんだし、それこそ親の許可なんていらない」
「いいえ。私は本部長より九つも年下なんですもの。ご両親に認めていただく為にも、きちんとご挨拶させてください」
「美怜…」

成瀬は面食らったように呟いてから、ふっと頬を緩める。

「やっぱり美怜はかっこいい。可愛いのに凛とした強さがある。俺にとって最高の女性だよ」

そう言うと美怜を抱き寄せ、愛を込めて優しく口づけた。

「え、あの、こんなところで…」
「こんなところだからだよ。綺麗な夜景を見下ろしながら、星が輝く夜空に愛する人と二人切り。これ以上ない程ロマンチックなシチュエーションで、キスしない訳がない」

唇が触れそうな距離でそうささやくと、すぐにまたキスをする。

角度を変えて何度も繰り返されるキスに、美怜の身体から徐々に力が抜けていく。

ん…、と美怜の唇から甘い声がもれると、成瀬はたまらないというように切なげに眉根を寄せ、更に深く美怜に口づけた。
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