恋とキスは背伸びして
「み、美怜?!実家って、ここ?」
「そうです。あ、車はその辺に停めてください」
「ちょっと待って。どこまでが敷地なの?一体、何坪ある?」
「んー、確か六百坪だったかな。七百?忘れちゃいました。あはは!どこまでが敷地なのかもよく分からないんですよね。境界線とかもないし。まあ、田舎あるあるですよ」
「どこにもないないだよ!」
成瀬は戦々恐々としながら父親から借りたセダンの車を停めると、美怜に続いてとてつもなく立派で大きな玄関に向かう。
「ただいまー」
いきなりガチャッと玄関を開けた美怜に、成瀬はまたしても驚いた。
「みみ、美怜?!鍵は?」
「ん?鍵なんてかけたことないです。そもそもついてないんじゃないかな?まあ、田舎あるあるですよ」
「どこにもないないだったら!」
「お父さーん、お母さーん、いるー?」
「みみみ、美怜!ちょっと待って、心の準備が…」
成瀬が慌てて手にしていたサマージャケットを着ると、お帰りーと声がして誰かの足音がパタパタと近づいて来た。
だが廊下が長すぎてその姿はなかなか見えない。
そのうちに、アンアン!と犬の鳴き声も聞こえてくる。
「あ、モモー!おいでー」
「アンアン!」
廊下の角から小さなふわふわの白い犬が飛び出して来て、一目散に美怜に駆け寄る。
「モモ、会いたかった!って、…え?」
美怜に続いて成瀬も、…え?と呟く。
モモと呼ばれた犬は目を輝かせて走って来ると、両手を広げて待っていた美怜ではなく、隣に立っていた成瀬に飛びついたのだ。
成瀬が咄嗟に両手に抱くと、モモはぺろぺろと成瀬の顔を舐める。
「出たよー、モモのイケメン好き!もうテレビにアイドルが映る度に、目をハートにしてかじりつくんですよ」
「は、はあ…」
もはや頭がついていかない成瀬は、されるがままに顔を舐められている。
「お帰り、美怜。おお、これはこれは。遠いところをようこそお越しくださいました」
ようやく廊下の先ににこやかな男性の姿が見えて、成瀬はピシッと姿勢を正す。
「初めまして、成瀬 隼斗と申します。本日はお時間を頂戴しまして、誠にありがとうございます」
深々と頭を下げるが、モモは腕の中から離れない。
「初めまして、成瀬さん。美怜の父です。いやー、こんなに立派でかっこいい方だとは。さ、どうぞ上がってください。おーい、母さん。成瀬さんと美怜が着いたぞー」
遠くで、はーい、と返事が聞こえるが、パタパタという足音だけで姿は見えない。
「本部長、上がってください」
「ああ、それじゃあ。失礼いたします」
美怜に促された成瀬は靴を脱いで上がると、振り返ってしゃがもうとする。
だがそれより先に、サッと美怜が自分の靴と成瀬の靴を揃えて端に寄せた。
「まあまあ、いらっしゃいませ。あらー、かっこいい!都会のイケメンだわ。テレビから出て来たみたいね。芸能人じゃないんですか?」
「あ、いえ。初めまして、成瀬 隼斗と申します」
美怜の母に頭を下げるが、やはり腕にはモモがいる。
「美怜の母です。こんな田舎まではるばるようこそ。あら、モモったらほんとにイケメンには目がないんだから。ごめんなさいね。さあさあ、お疲れでしょう?中でゆっくり休んでください」
「はい、失礼いたします」
成瀬はモモを抱いたまま、長い廊下を美怜に続いて歩いて行った。
「そうです。あ、車はその辺に停めてください」
「ちょっと待って。どこまでが敷地なの?一体、何坪ある?」
「んー、確か六百坪だったかな。七百?忘れちゃいました。あはは!どこまでが敷地なのかもよく分からないんですよね。境界線とかもないし。まあ、田舎あるあるですよ」
「どこにもないないだよ!」
成瀬は戦々恐々としながら父親から借りたセダンの車を停めると、美怜に続いてとてつもなく立派で大きな玄関に向かう。
「ただいまー」
いきなりガチャッと玄関を開けた美怜に、成瀬はまたしても驚いた。
「みみ、美怜?!鍵は?」
「ん?鍵なんてかけたことないです。そもそもついてないんじゃないかな?まあ、田舎あるあるですよ」
「どこにもないないだったら!」
「お父さーん、お母さーん、いるー?」
「みみみ、美怜!ちょっと待って、心の準備が…」
成瀬が慌てて手にしていたサマージャケットを着ると、お帰りーと声がして誰かの足音がパタパタと近づいて来た。
だが廊下が長すぎてその姿はなかなか見えない。
そのうちに、アンアン!と犬の鳴き声も聞こえてくる。
「あ、モモー!おいでー」
「アンアン!」
廊下の角から小さなふわふわの白い犬が飛び出して来て、一目散に美怜に駆け寄る。
「モモ、会いたかった!って、…え?」
美怜に続いて成瀬も、…え?と呟く。
モモと呼ばれた犬は目を輝かせて走って来ると、両手を広げて待っていた美怜ではなく、隣に立っていた成瀬に飛びついたのだ。
成瀬が咄嗟に両手に抱くと、モモはぺろぺろと成瀬の顔を舐める。
「出たよー、モモのイケメン好き!もうテレビにアイドルが映る度に、目をハートにしてかじりつくんですよ」
「は、はあ…」
もはや頭がついていかない成瀬は、されるがままに顔を舐められている。
「お帰り、美怜。おお、これはこれは。遠いところをようこそお越しくださいました」
ようやく廊下の先ににこやかな男性の姿が見えて、成瀬はピシッと姿勢を正す。
「初めまして、成瀬 隼斗と申します。本日はお時間を頂戴しまして、誠にありがとうございます」
深々と頭を下げるが、モモは腕の中から離れない。
「初めまして、成瀬さん。美怜の父です。いやー、こんなに立派でかっこいい方だとは。さ、どうぞ上がってください。おーい、母さん。成瀬さんと美怜が着いたぞー」
遠くで、はーい、と返事が聞こえるが、パタパタという足音だけで姿は見えない。
「本部長、上がってください」
「ああ、それじゃあ。失礼いたします」
美怜に促された成瀬は靴を脱いで上がると、振り返ってしゃがもうとする。
だがそれより先に、サッと美怜が自分の靴と成瀬の靴を揃えて端に寄せた。
「まあまあ、いらっしゃいませ。あらー、かっこいい!都会のイケメンだわ。テレビから出て来たみたいね。芸能人じゃないんですか?」
「あ、いえ。初めまして、成瀬 隼斗と申します」
美怜の母に頭を下げるが、やはり腕にはモモがいる。
「美怜の母です。こんな田舎まではるばるようこそ。あら、モモったらほんとにイケメンには目がないんだから。ごめんなさいね。さあさあ、お疲れでしょう?中でゆっくり休んでください」
「はい、失礼いたします」
成瀬はモモを抱いたまま、長い廊下を美怜に続いて歩いて行った。