恋とキスは背伸びして
本館を出ると、緑の木々や咲き誇る花々、噴水が美しい庭園を歩く。

「屋根に青銅でできた鎧武者がいるでしょ?一人は口を開けてるけど、もう一人は閉じてる。これは『阿吽』の相を表しているんだって」
「そうなんだ」
「美怜、それダジャレ?」
「え…、違うから!」
「ははは!」

楽しく庭を散歩し、最後に和風別館『游心亭』を見学した。

そこはまるで高級旅館のような風情のある佇まいで、日本の伝統建築の匠の技があちこちに散りばめられている。

玄関から続く渡り廊の右手には坪庭。

そして四十七畳敷きの主和室は、すぐ前にある池に太陽の光が差し込むと、天井に水のゆらぎが美しいグラデーションとなって現れていた。

「素敵ね。庭園の盆栽も見事だわ」

和の世界もじっくり味わい、改めて日本の良さを噛みしめながら、二人は大満足で迎賓館をあとにした。
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