恋とキスは背伸びして
「すごい!さっきの迎賓館にも負けないくらいゴージャスですね」
大きな窓から美しい景色が見渡せるラウンジは、ソファ席やテーブル席など様々な家具が並び、好きな場所を選んでゆっくりとくつろぐことができる。
美怜達はソファ席に並んで座った。
「失礼いたします。成瀬様、本日はプレミアムアフターヌーンティーをご予約いただき、誠にありがとうございます。こちらでは、トリュフ・フォアグラ・キャビアの世界三大珍味を使ったセイボリーや、本場英国の『フォートナム・アンド・メイソン』の紅茶をご用意しております。どうぞごゆっくりお楽しみくださいませ」
グラスにミネラルウォーターを注いでから、にこやかな女性スタッフに説明されて、美怜は目を丸くする。
「ト、ト、トリュフ?フォアグラにキャビアも?幻のお三方と今日ここで一気にお会いするなんて」
スタッフが去ってから小声で話しかけると、成瀬は声を上げて笑った。
「美怜、幻って珍獣じゃないんだから。それに宇宙人と遭遇するような身構え方だな」
やがて三段のプレートスタンドとティーポットが運ばれてくる。
「わあ、美味しそう!」
上段にはひと口サイズのタルトやモンブラン、小さなカップのパフェやムースなど。
中段にはスコーンやパウンドケーキ、クッキーサンド。
そして下段には、フランス料理の前菜のような美しい品が並んでいる。
「こちらのオマール海老はキャビアと一緒にお召し上がりください。神戸ビーフのローストには本わさびを添えて。そしてこちらがフォアグラのテリーヌ。こちらはトリュフが香るスコーンでございます」
一つ一つ丁寧に手で差し示してくれるスタッフの言葉に、美怜は目を見開いた。
「え、海老とキャビア?キャビアってどちらにいらっしゃるの?本わさびって本部長の本?テリーヌさんってフォアグラの名前?トリュフが香るって、スパイスだったの?」
頭の中がハテナで一杯の美怜の言葉に、成瀬は笑いが止まらなくなる。
「美怜、キャビアはこちらのつぶつぶのお方だよ。本わさびは本部長とは無関係、だと思いたい。テリーヌさんはひょっとしたらいるかもしれないけど、人の名前じゃなくて料理の名前。あと、トリュフはスパイスではなく、きのこの一種。他に質問はある?」
「つぶつぶ?きのこ??全くの予想外!え、あとフォアグラさんは?」
「こちらのお方」
「テリーヌさんね」
「だから違うって」
真剣にじっくりと眺めてから、美怜は恐る恐る食べてみた。
「どう?美怜。初めましてのご感想は」
「な、なんだか。想像してたんと違う、みたいな」
「ははっ!まあ、俺もそんなに美味しいとは思えないんだよね。好き好んでは食べないかな。特にフォアグラさんはかわいそうだし」
「えっ、テリーヌさんってかわいそうな方なのね?」
「まあ、そうかな。違うけど。ほら、他にもたくさんあるよ。どんどん食べな」
「うん。あー、神戸ビーフ美味しい!さすが本わさび添え。ね?本部長」
美怜の言葉に、成瀬はしょぼんと肩を落とす。
(今日はずっと隼斗さんって名前で呼んでくれてたのに。本わさびで気を取られたな)
肉だけに、憎々しく思いながらローストビーフを口に入れる。
「う、旨い!」
「でしょう?さすがは本わさび。本がつくと何でもすごいのね、本部長」
もう本わさびのことは忘れて欲しい。
なんとか隼斗を思い出すワードはないものかと、成瀬は考え込んでいた。
大きな窓から美しい景色が見渡せるラウンジは、ソファ席やテーブル席など様々な家具が並び、好きな場所を選んでゆっくりとくつろぐことができる。
美怜達はソファ席に並んで座った。
「失礼いたします。成瀬様、本日はプレミアムアフターヌーンティーをご予約いただき、誠にありがとうございます。こちらでは、トリュフ・フォアグラ・キャビアの世界三大珍味を使ったセイボリーや、本場英国の『フォートナム・アンド・メイソン』の紅茶をご用意しております。どうぞごゆっくりお楽しみくださいませ」
グラスにミネラルウォーターを注いでから、にこやかな女性スタッフに説明されて、美怜は目を丸くする。
「ト、ト、トリュフ?フォアグラにキャビアも?幻のお三方と今日ここで一気にお会いするなんて」
スタッフが去ってから小声で話しかけると、成瀬は声を上げて笑った。
「美怜、幻って珍獣じゃないんだから。それに宇宙人と遭遇するような身構え方だな」
やがて三段のプレートスタンドとティーポットが運ばれてくる。
「わあ、美味しそう!」
上段にはひと口サイズのタルトやモンブラン、小さなカップのパフェやムースなど。
中段にはスコーンやパウンドケーキ、クッキーサンド。
そして下段には、フランス料理の前菜のような美しい品が並んでいる。
「こちらのオマール海老はキャビアと一緒にお召し上がりください。神戸ビーフのローストには本わさびを添えて。そしてこちらがフォアグラのテリーヌ。こちらはトリュフが香るスコーンでございます」
一つ一つ丁寧に手で差し示してくれるスタッフの言葉に、美怜は目を見開いた。
「え、海老とキャビア?キャビアってどちらにいらっしゃるの?本わさびって本部長の本?テリーヌさんってフォアグラの名前?トリュフが香るって、スパイスだったの?」
頭の中がハテナで一杯の美怜の言葉に、成瀬は笑いが止まらなくなる。
「美怜、キャビアはこちらのつぶつぶのお方だよ。本わさびは本部長とは無関係、だと思いたい。テリーヌさんはひょっとしたらいるかもしれないけど、人の名前じゃなくて料理の名前。あと、トリュフはスパイスではなく、きのこの一種。他に質問はある?」
「つぶつぶ?きのこ??全くの予想外!え、あとフォアグラさんは?」
「こちらのお方」
「テリーヌさんね」
「だから違うって」
真剣にじっくりと眺めてから、美怜は恐る恐る食べてみた。
「どう?美怜。初めましてのご感想は」
「な、なんだか。想像してたんと違う、みたいな」
「ははっ!まあ、俺もそんなに美味しいとは思えないんだよね。好き好んでは食べないかな。特にフォアグラさんはかわいそうだし」
「えっ、テリーヌさんってかわいそうな方なのね?」
「まあ、そうかな。違うけど。ほら、他にもたくさんあるよ。どんどん食べな」
「うん。あー、神戸ビーフ美味しい!さすが本わさび添え。ね?本部長」
美怜の言葉に、成瀬はしょぼんと肩を落とす。
(今日はずっと隼斗さんって名前で呼んでくれてたのに。本わさびで気を取られたな)
肉だけに、憎々しく思いながらローストビーフを口に入れる。
「う、旨い!」
「でしょう?さすがは本わさび。本がつくと何でもすごいのね、本部長」
もう本わさびのことは忘れて欲しい。
なんとか隼斗を思い出すワードはないものかと、成瀬は考え込んでいた。