恋とキスは背伸びして
「わー、やっぱりこれ、どう見ても大胆だな」

ドレスに着替えると、美怜は鏡に映る自分をまじまじと見つめる。

胸元にふんわりとしたバラが並ぶのは可愛いが、胸の谷間が見えそうな程ギリギリのラインで、背中も大きく開いている。

身体にピタッと沿うデザインは、ウエストやヒップラインも拾ってしまい、おまけにスリットからは左のふとももが見えていた。

「うーん、寒い。色々な意味で寒い」

美怜は明日の為に持って来ておいたシルバーのラメ入りのショールを大きく肩に掛けることにした。

パウダールームで髪をアップにまとめ、メイクも色をしっかり使って華やかに仕上げる。

ピンクのワンカラーグラデーションのネイルの手に、バラのチャームのブレスレットを着けた。

「準備できました」

ドアを開けてリビングに行くと、ソファに座ってパソコンを開いていた成瀬が顔を上げ、驚いたように目を見張る。

「美怜…、すごく綺麗だ。こっちにおいで」
「あ、はい」

おずおずと近づくと、成瀬は立ち上がって美怜を両腕に抱きしめる。

「こんなに綺麗だなんて。どうして今まで隠してたの?」
「いえ、その。隠すつもりもだますつもりもありませんが…」
「俺だけの美怜でいてくれ。他の誰にも知られたくない」
「ええ?私の身元はもう色んな人にバレてますけど?」
「さっきから何を言っている?」
「本部長こそ、何をおっしゃいますやら」

噛み合わないと諦めたのか、成瀬は美怜の顎をそっと下から掬い上げると顔を寄せた。

「美怜、絶対に誰にも渡さない。美怜に触れられるのは俺だけだ」

独占欲をむき出しにしたような、ギラッとした男の色気を含む成瀬の瞳に捕えられ、美怜は息を呑む。

「愛してる、俺の美怜」

そう呟くとゆっくり顔を近づけ、美怜の柔らかくふっくらした唇に口づけた。

軽く押し当てただけの唇に美怜の唇の弾力が伝わり、美怜がもらす甘く切ない吐息も拾う。

成瀬は美怜の小さく可愛らしい唇をついばむようにチュッと音を立てると、ようやく身体を離した。

「これ以上は止められなくなる。行こうか」

そう言って、ソファに掛けておいたジャケットに腕を通す。

ホワンとしたままの美怜にクスッと笑い、ウエストを抱き寄せると、そのまま二人で部屋を出た。
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