恋とキスは背伸びして
「美怜、クリスマスイブなんだけどさ。今年は平日でお互い仕事があるだろう?夜からしか会えないけど、どこか行きたいところある?レストランとか、ホテルとか」
「ううん。クリスマスイブって、四日後でしょう?今日たくさん楽しいことさせてもらったから、もう充分」
「そうか。それなら、俺のマンションに来ないか?」
「え、本部長のおうち?」
「ああ。美怜、俺の部屋に来たことないだろう?まあ別に大した部屋じゃないし殺風景だけど、二人でチキンでも食べながらのんびりできるかなと思って」
「うん!それがいい」

美怜の明るい声に、成瀬も笑顔で頷く。
が、次の瞬間真顔に戻った。

「美怜、ひょっとして眠い?」
「うん?そんなことないんだけど、なんだか誰かに呼ばれてる気がする。スーッて身体が引き寄せられて」
「それ、眠気じゃないの?」
「そうなの、かな?」

ぼんやりと呟く美怜は、まぶたも重そうだ。
よく見るとまばたき一回に三秒もかかっている。

(いかん!これはマズイ!)

成瀬はハッと我に返ると立ち上がった。

「み、美怜?ちょっと散歩でもしようか?」
「…ん?本部長、寝ぼけてるんですか?」
「いや、全くもってそんなことはない。あ!冷たい水でも飲むか?」
「ううん、もう…お腹が…、ちゃぽちゃぽ…」
「美怜、どこへ行く?!帰って来い!」

美怜の肩をガシッと掴み、がくがくと揺さぶる。
だが美怜は成瀬の胸にくたっと頭を預けた。

「だめだ、行くな、行かないでくれ!頼むから、美怜!」
「んー、うるさい」

ぼんやりと目を開けた美怜は、けだる気に両手を上げると成瀬の首に回した。

「…抱っこ」

ドキューン!と成瀬のハートが打ち抜かれる。

(もう、いい。プロポーズは今はいい。とにかく今は、これでいい)

首に腕を回して抱きついてきた美怜を、成瀬は一気に抱き上げると、そのままベッドルームへと向かった。

広いキングサイズベッドにそっと美怜を横たえると、すぐそばにひざまずいて優しく頭をなでる。

するとトロンとした瞳で美怜が成瀬を見上げて呟いた。

「隼斗さん…」

成瀬の身体は一気に熱くなる。

「美怜…」

切なさに胸が痛み、愛しさに理性が飛んだ。

成瀬は美怜に覆いかぶさると、その唇を熱く奪う。

何度も何度も口づけ、熱に浮かされたように美怜の名を呟いた。

んっ…と美怜が吐息をもらしながら仰け反ると、逃すまいと追いかけて更に深くキスをする。

やがて成瀬の唇は、美怜の耳元を通って首筋を下り、綺麗な鎖骨にたどり着く。

そのまま鎖骨に沿って唇を這わせ、左手を美怜の背中に回して抱きしめると、右手でみずみずしい肩のラインをなぞった。

「んん、やっ…」

美怜の口からこぼれる甘い声に、ますます成瀬はのめり込む。

鎖骨の下に続くなめらかな胸元に手を触れ、あちこちに口づける。

美怜が左手を宙に伸ばすと、その手を右手で握り、しっかりと指を絡めた。
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