恋とキスは背伸びして
やがて卓のもとへたどり着くと、友香は卓と腕を組み、二人で祭壇を上がる。

誓いの言葉、指輪の交換。

その一つ一つに美怜は感激して、涙を溢れさせた。

そして誓いのキス。

卓と向き合った友香のベールを、卓がそっと上げて優しく微笑む。

友香も恥じらうような笑みを浮かべて、卓と見つめ合った。

卓が友香の肩に手を置き、ゆっくりと口づける。

美怜はポロポロと涙をこぼしながら、口元でハンカチを握りしめて嗚咽をこらえていた。

二人は列席者が見守る中、晴れて夫婦となり、祝福のフラワーシャワーを浴びながら幸せそうに退場する。

「おめでとう!卓、友香ちゃん」
「おめでとう!富樫、友香さん」

美怜と成瀬の言葉に、二人は笑顔になる。

「ありがとう、美怜、成瀬さん。次はお二人の番ですね」
「ありがとうございます。美怜さん、成瀬さん。美怜さんたら、目が真っ赤」

友香に言われて、美怜は「ええ?!」と顔を両手で押さえる。

「ははっ!友香より泣いてんな。さすがは美怜」

そう言いながら卓は友香と一緒に通り過ぎた。

美怜は顔を押さえたまま成瀬に尋ねる。

「本部長。私の目そんなに赤い?」
「ああ。いつぞやのボロ負けボクサー再びって感じだな」
「ボクサーって、あの時の…?」

美怜は、ルミエールの部屋に視察に行った時のことを思い出す。

成瀬に対して萎縮していた美怜に、ちゃんと泣きなさいと声をかけた成瀬。

あの時にはもう、成瀬のことを好きになっていたのではないかと、美怜は思った。

そっと視線を上げて隣に並ぶ成瀬を見ると、ん?と優しく微笑んでくれる。

「私、ずっと前からあなたのことが大好きです」

突然の美怜の言葉に少し驚いてから、成瀬は嬉しそうな笑顔を浮かべた。

「俺もだよ。ずっと前から美怜のことが好きだ。そしてこの先も、ずっとずっと愛してる」
「はい、私も。この先もずっとずっと、あなただけを愛し続けます、隼斗さん」

チャペルの中で微笑みながら見つめ合う二人。

タキシードとウェディングドレスに身を包み、思い出のホテルのチャペルで改めて愛を誓い合ったのは、それから五ヶ月後。

バラの花が綺麗に咲き誇る季節のことだった。

(完)
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