恋とキスは背伸びして
オフィス街の高層ビルにある高級中華料理店の個室で、美怜達は倉本達と大きな円卓を囲んで楽しく食事をした。

客室のレイアウトや、どんな家具を入れるか、どんなテーマやコンセプトで部屋をコーディネートするか。

会社の隔たりもなく、皆でアイデアを出しながら美味しい料理を味わう。

男性陣が和やかに話をするかたわら、先方の若い女性社員が美怜に話しかけてきた。

「結城さんのおっしゃる通り、私もカップル向けのお部屋には、洗面所にスツールとチェストを置きたいな。彼とのお泊りならメイクも座って念入りにしたいし、こそこそ着替えを手に歩き回りたくないもの。ポトッと下着を落っことしたりしたら嫌だし。ねえ?結城さん」
「そそそ、そうですよね」

美怜は手にしたレンゲを落としそうになりながら焦って取り繕う。

「あとはどんなお部屋がいいかなあ。彼とのロマンチックな夜を過ごせるお部屋。結城さんが今まで泊まった所で、良かったお部屋はありますか?」
「えっと、わたくしはなにぶん経験不足でして申し訳ありません。次回までには勉強しておきます」
「あら、そんな勉強だなんて。デートで行った場所で良い所があったり、何かいいアイデアが浮かんだら教えてくださいね」
「は、はい!ご期待に沿えるよう、できる限りの努力をして臨みたいと思います」
「ふふ、結城さんって真面目で面白い」

そんな美怜達をよそに、倉本や成瀬達も話が弾み、暗黙の了解のように契約を結ぶ流れになった。

卓が詳しく契約内容を記載した資料を渡し、先方と確認していく。

また、客室やロビーだけでなくレストランの内装も含めて手がけることになり、卓が万一の為に用意しておいた資料も渡すことになった。

「それでは、今後とも長いおつき合いをよろしくお願いいたします」
「こちらこそ。本日は誠にありがとうございました」

すっかり打ち解けた雰囲気で、それぞれ握手をしてお開きとなった。
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