恋とキスは背伸びして
「えーっと、次の予定は横浜港のクルージングです。六十分のアフターヌーンクルーズがあるそうです」

美怜が先輩達から教わったデートプランを確認すると、これまた王道だな、と成瀬が頷く。

乗り場に行くと、キラキラと輝く海と大きくて優雅な船に、美怜は興奮気味になる。

「すごい!私、船に乗るなんていつ以来だろう?楽しみ!早く乗りましょ!」

二人を振り返って手招きし、子どものように無邪気にはしゃいでタラップに向かった。

「やっぱり少し揺れますね。あ!動き出した!」

スカイデッキに上がり、見送ってくれる地上スタッフに美怜も大きく手を振り返す。

船内では美味しいケーキと紅茶がふるまわれたが、美怜は食べ終わるとそそくさとまたデッキに上がった。

「潮風が気持ちいい!下から見上げるベイブリッジも迫力ありますね。それになんて素敵な景色!夜に乗ったら夜景が綺麗だろうなあ」
「ああ、九十分のトワイライトクルーズもあるらしいよ」
「そうなんですね!乗ってみたいなあ」

美怜はデッキの手すりに両手を載せて、飽きることなく海を眺めている。

その横顔を見て、またもや成瀬はスマートフォンを取り出した。

少し離れたところから、景色と美怜のバランスを考えつつ何枚か写真を撮る。

写り具合を確認しながら見返していると、どの写真の美怜も優しい微笑みを浮かべていて目を引かれた。

何枚か選択して美怜のメッセージアカウントに転送する。

(見たらどんな反応をするだろう?)

この写真も、今日の思い出として取っておいてくれたらと成瀬は願った。
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