恋とキスは背伸びして
その後も和やかにミュージアムの説明をしながら案内していた美怜は、そろそろかな?と後方の卓に目配せする。

卓が大きく頷くと、美怜も頷き返し、それではこれより上層階へご案内いたします、と言ってエレベーターに向かった。

ここからは一般のお客様は入れないエリアになる。

倉庫としてたくさんの自社製品を保管しているそのエリアに、法人のお客様だけ案内する理由。
それはズバリ、商談の為だった。

(えーっと、今回のお客様は、新しく湾岸エリアに作られたコンベンションセンターの運営を任された会社なのよね。それに行政も絡んでいて、五人いらっしゃるうちのお二人が役所の職員のはず)

エレベーターを降りて長い通路を歩きながら、美怜は頭の中で情報を整理する。

(コンベンションセンターのロビーと控え室に置く、ソファセットやテーブルセットを購入される予定。でもこちらとしては、大ホールのイベントで使用するテーブルや椅子、飾りなども含めたサブスクリプション契約をいただきたい、ってことだったわよね。卓の話では)

やがて大きな扉の前までくると、美怜は、よし!と気合いを入れてから振り返った。

「それでは、弊社の製品を一挙にご披露いたします。どうぞお入りください」

IDカードでセキュリティを解除すると、重い扉を開けて中へと促す。
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