恋とキスは背伸びして
「さてさて、どっちかなー?」

卓は二枚のカードキーを右手に、楽しそうにエレベーターを降りる。

左手には、一階のショップで買ったお酒やおつまみが入った袋を持っていた。

カードキーが挟んであったカバーには、それぞれ【2011】【1815】と書かれており、どちらがシングルでどちらがツインかは分からない。

よって、三人で一緒に向かうことになった。

「俺はこっちがシングルだと思うなー」

そう当たりをつけた卓に従ってまずは二十階の十一号室に行く。

そこがシングルルームなら、美怜とはそこで別れることになる。

が、ドアを開けて入ると、中にはベッドが二台…

「ありゃ。こっちがツインだったか」

すると成瀬が、卓の手からもう一枚のカードキーを取り上げた。

「結城さん、部屋まで送る」
「いえ、そんな。一人で大丈夫です」
「だめだ。こんな時間に女の子が一人でいたら危ない」

そう言ってドアの外へと促す。

美怜が歩き出そうとすると、後ろから卓の声がした。

「美怜。せっかくだから、ちょっと飲んでいったら?」
「え、でも。本部長にご迷惑じゃ…」
「成瀬さん、いいですか?」

そう言いつつ、卓はテーブルにお酒とおつまみを並べ始めた。

「結城さんがいなくても飲むつもりなんだろ?」
「よくお分かりで」

成瀬はやれやれと肩をすくめると、どうぞと美怜をテーブルに促す。

「では少しだけお邪魔します」

そして三人で、かんぱーい!と缶ビールを開けた。
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