恋とキスは背伸びして
「ね、卓くん。ちょっといい?」
小声で真剣に話しかけられ、卓は、はいと振り返る。
「うわっ、ど、どうしたんですか?」
佳代の後ろには、いつの間にかずらりと先輩達が顔を揃えていた。
「卓くん。聞きたいことがあるんだけど」
「はい、何でしょう。ってか、恐ろしい…」
「恐ろしい?今、恐ろしいって言った?」
「言ってません!お美しいお姉様方に囲まれて、恐れ多いって言っただけです」
「どうだか…。まあ、いいでしょう」
にこりともせず、佳代はずいっと膝を進める。
「卓くんは、異性の親友が成立すると思う派?」
「ああ、それですか。美怜とも話してたんですよね。俺、最初は成立するって思ってたんです。実際、美怜は親友だし。けどよくよく考えてみたらちょっと違うかなって」
「どう違うの?」
「ずっと親友だと思ってた男女も、ふとした瞬間にいい感じの雰囲気になって、そうすると一線超えちゃうだろうなって。だから異性の親友は、単にそんな雰囲気になったことがないだけなのかなと。何かのきっかけがあれば恋人同士になる、そんなちょっと危うさを抱えた親友ってことですかね」
「なるほど」
佳代は頷くとくるりと向きを変え、後ろに控えた美沙達と正座で円陣を組み、ひそひそと顔を寄せて話し始めた。
「ってことはよ?卓くんはシチュエーション次第では、美怜とそうなるかもって思ってるんじゃない?」
「うんうん。少なくとも、美怜は恋愛対象外って割り切ってる訳ではなさそうね」
「だったらロマンチックな雰囲気に持っていけば、ひょっとしてひょっとするかも?」
「そうね。ちょっとお膳立てしてみよう。あとは、卓くんのあの妙な軽さが心配ね」
「確かに。そこは釘刺しておこう」
どうしたんだ?と卓が眉根を寄せていると、先輩達は一斉に顔を上げてこちらを見た。
「卓くん」
「わっ!はい、何でしょう?」
「いい?美怜には父親代わりがこんなにたくさんいるの。どんな相手でも嫁に出すのは複雑な心境なの。それを忘れないで」
は?!と卓は目が点になる。
「それで卓くん。クリスマスの予定は?」
「二十五日ですか?仕事です」
「仕事のあとよ!夜は?」
「ですから仕事です」
むーっ、と先輩達は卓を睨み始める。
「ちょっと待ってくださいよ。本当に夜も仕事です。ルミエールのクリスマス装飾の撤去に立ち会わないといけないので」
「え?ってことは、ひょっとして美怜も?」
「はい。あと本部長も。いつもルミエールにはこの三人で行ってます」
「なるほど。少々お待ちを」
そう言うとまた先輩達は円陣を組んでひそひそと顔を寄せ合った。
「じゃあさ、撤去作業が終わったらそのままホテルの部屋に泊まるってのは?私達で予約入れてあげようか」
「でも本部長もいらっしゃるんでしょ?」
「ああ、そっか。そこはさあ、若い二人に気を利かせてくれないかなあ?クリスマスなんだし」
「本部長は彼女いるのかな?案外、そそくさと帰るかもよ?」
「そうか、あんなにイケメンだもん。モテるよね」
「よし!じゃあ早速ダブルルームを予約しよう」
佳代がスマートフォンを取り出し、皆も真剣に画面を覗き込んだのだが…
「ま、満室」
揃ってがっくりと肩を落とす先輩達を、卓はキョトンと眺めていた。
小声で真剣に話しかけられ、卓は、はいと振り返る。
「うわっ、ど、どうしたんですか?」
佳代の後ろには、いつの間にかずらりと先輩達が顔を揃えていた。
「卓くん。聞きたいことがあるんだけど」
「はい、何でしょう。ってか、恐ろしい…」
「恐ろしい?今、恐ろしいって言った?」
「言ってません!お美しいお姉様方に囲まれて、恐れ多いって言っただけです」
「どうだか…。まあ、いいでしょう」
にこりともせず、佳代はずいっと膝を進める。
「卓くんは、異性の親友が成立すると思う派?」
「ああ、それですか。美怜とも話してたんですよね。俺、最初は成立するって思ってたんです。実際、美怜は親友だし。けどよくよく考えてみたらちょっと違うかなって」
「どう違うの?」
「ずっと親友だと思ってた男女も、ふとした瞬間にいい感じの雰囲気になって、そうすると一線超えちゃうだろうなって。だから異性の親友は、単にそんな雰囲気になったことがないだけなのかなと。何かのきっかけがあれば恋人同士になる、そんなちょっと危うさを抱えた親友ってことですかね」
「なるほど」
佳代は頷くとくるりと向きを変え、後ろに控えた美沙達と正座で円陣を組み、ひそひそと顔を寄せて話し始めた。
「ってことはよ?卓くんはシチュエーション次第では、美怜とそうなるかもって思ってるんじゃない?」
「うんうん。少なくとも、美怜は恋愛対象外って割り切ってる訳ではなさそうね」
「だったらロマンチックな雰囲気に持っていけば、ひょっとしてひょっとするかも?」
「そうね。ちょっとお膳立てしてみよう。あとは、卓くんのあの妙な軽さが心配ね」
「確かに。そこは釘刺しておこう」
どうしたんだ?と卓が眉根を寄せていると、先輩達は一斉に顔を上げてこちらを見た。
「卓くん」
「わっ!はい、何でしょう?」
「いい?美怜には父親代わりがこんなにたくさんいるの。どんな相手でも嫁に出すのは複雑な心境なの。それを忘れないで」
は?!と卓は目が点になる。
「それで卓くん。クリスマスの予定は?」
「二十五日ですか?仕事です」
「仕事のあとよ!夜は?」
「ですから仕事です」
むーっ、と先輩達は卓を睨み始める。
「ちょっと待ってくださいよ。本当に夜も仕事です。ルミエールのクリスマス装飾の撤去に立ち会わないといけないので」
「え?ってことは、ひょっとして美怜も?」
「はい。あと本部長も。いつもルミエールにはこの三人で行ってます」
「なるほど。少々お待ちを」
そう言うとまた先輩達は円陣を組んでひそひそと顔を寄せ合った。
「じゃあさ、撤去作業が終わったらそのままホテルの部屋に泊まるってのは?私達で予約入れてあげようか」
「でも本部長もいらっしゃるんでしょ?」
「ああ、そっか。そこはさあ、若い二人に気を利かせてくれないかなあ?クリスマスなんだし」
「本部長は彼女いるのかな?案外、そそくさと帰るかもよ?」
「そうか、あんなにイケメンだもん。モテるよね」
「よし!じゃあ早速ダブルルームを予約しよう」
佳代がスマートフォンを取り出し、皆も真剣に画面を覗き込んだのだが…
「ま、満室」
揃ってがっくりと肩を落とす先輩達を、卓はキョトンと眺めていた。