恋とキスは背伸びして
「それでは、ここで。本部長、ごちそうになった上に送ってくださって、ありがとうございました」

美怜のマンションに着き、車から降りた美怜は成瀬と卓に向き合う。

「こちらこそ。大みそかまで仕事させてしまって悪かったね。良いお年を」
「はい。今年も大変お世話になりました。本部長もどうぞ良いお年をお迎えください。卓も、良いお年を」
「ああ、美怜もな。来年もよろしく」

三人で微笑み合ってから別れ、美怜は部屋に戻った。

「ただいま。ふう、疲れた。お風呂に入ってからゆっくり年越ししようかな」

そこでふと、成瀬からもらった誕生日プレゼントのことを思い出す。

(そうだ、プレゼント!中身は何だろう?)

わくわくドキドキしつつカバンから取り出し、手のひらに載せた。

小さな正方形の箱は、光沢のあるシャンパンベージュのペーパーでラッピングされ、鮮やかなピンクのリボンで結ばれていた。

(可愛い箱。開けるのがもったいないな)

ふふっと笑ってから、意を決してそっとリボンを解く。

シュルッと軽い音を立ててリボンが解け、ラッピングペーパーの下から白い箱が現れた。

フタを取ると、中にはワインレッドのビロードのケースが入っている。

(なんだろう…)

美怜のわくわくは最高潮に達し、胸を高鳴らせながらケースを開けた。

「わあっ、なんて綺麗…」

入っていたのは、ガラス細工の真っ赤なバラのチャーム。

美怜はゆっくりと手に取り、照明の明かりにかざしてみた。

一輪のバラは光を受けて、美しく真紅に色づく。

「素敵…。いつまでも見とれちゃう」

疑似デートで一緒にバラを見た時、成瀬から送られた『The Rose』の歌詞を思い出す。

美怜は小さく歌うと、もう一度チャームに目をやり、ふふっと微笑んだ。
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