恋とキスは背伸びして
一月八日。
美怜は朝からスーツを着て、ミュージアムではなく本社に出社した。

「本部長。明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします」
「明けましておめでとう。こちらこそ今年もよろしく」

執務室で成瀬に年始の挨拶をすると、美怜は少しためらってから、ちらりとドアを振り返る。

卓はまだ来る気配がない。

(どうしよう。気になっちゃうし、もう先に渡しちゃおう!)

頷くと、顔を上げて成瀬に声をかけた。

「本部長。あの、大変遅くなりましたがこちらを…」

そう言って、あの日渡しそびれたクリスマスプレゼントを差し出す。

すると成瀬は嬉しそうに微笑み、ありがとうと受け取った。

「俺からはこれを」

成瀬がデスクから取り出した長方形の包みを、美怜も両手で受け取る。

「ありがとうございます。あの、本部長。誕生日プレゼントも本当にありがとうございました。とても素敵で、毎日持ち歩いて眺めてます」
「ほんとに?良かった、気に入ってもらえて。でも今回はそんなに期待しないでね」
「ええ?!そう言われると、ものすごく気になります。開けてもいいですか?」
「ええ?!いや、うーん。恥ずかしいから、帰ってから開けて」
「えー、ますます気になります。でも帰ってからのお楽しみにしておきますね」
「うん。俺も早く帰って開けてみたいよ」

その時コンコンとノックの音がして、「富樫です!」と卓の声がした。

「どうぞ」

成瀬が返事をしながら、さり気なくポケットにプレゼントの包みをしまう。

美怜もカバンの中にプレゼントをしまった。

「失礼します!明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします!」

相変わらず元気な卓に少し苦笑いしながら、成瀬と美怜は顔を見合わせる。

改めて三人で新年の挨拶をしてから、車でルミエール ホテルに向かった。
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