エリート狼営業マンの甘くてズルい魅惑の罠


「そもそも、あなたが人妻なんかに手を出すのが悪いんでしょ?私には関係ないと思うんだけど」


それでもやはり一言くらいは言ってやらないと気が済まなくて、自業自得だと言うように彼に嫌悪を向ける。


「別に好きで手出したわけじゃねぇよ。旦那に頼まれて引き受けただけだ」

「は!?」

「どこまで盗み聞きしてたのか知らねぇけど。あの人の旦那は元来出張族でな、ひと月のうち大体半分くらいは出張で家を空けてる。表向きはな」


眉ひとつ動かさずに続ける彼のその言葉に、私は開いた口が塞がらず、感情のままに怪訝を示す。


「不倫してんだよ。旦那もな。出張ついでに他所で女作って、仕事の傍ら遊んでんだよ」

「……」

「一度、あの奥さんにバレそうになったらしくて、そのときはどうにか誤魔化したらしいんだけど、次見つかったらマズいっつーわけで、だったら嫁にも不倫させようっつー魂胆だよ」

「……」


信じられない。本当に、男ってヤツは……。

なんてことを考えやがる。


仮にも永遠の愛を誓い合った人生の伴侶相手に、そういう狡猾な思考になることがもう信用できない。

っていうか、次にまた不倫がバレたらマズいからもう止めよう、じゃなくて、なんで両成敗にしようとするんだよ!


私は心底軽蔑した眼差しで、気だるげに頬を掻く向かいの彼を睨んだ。


「いや俺を睨むなよ。そういうわけであれは旦那の希望に俺が応えてやってるだけで、はなから俺にその気はねぇんだよ。なのにあの嫁ときたら、たかだか数回キスした程度でソッコー惚れ込みやがって。どんだけ旦那下手なんだっつの」

「……」


ああ、やっぱりこの男もクズだ。

その奥さんも確かに問題だと思うけど、なんだか逆ハニートラップに嵌められてる感じがして同情の余地が全くないとも言い切れない。


しかしあんなに綺麗な若奥様でも、不倫とかされたりするんだね。やっぱり男って生き物は浅ましい。

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