エリート狼営業マンの甘くてズルい魅惑の罠


「はい?」


最近なんだかこればかりな気がする。

聞き間違いであってくれと、そう願わずにはいられないリアクションだ。


「何がよしなのが全くわからないし、紫苑さんが私の部屋に来たがる意味もわからないですけど」

「いや、なんでさん付け?俺らタメだけど」

「え!?」


私が思わず聞き返すと、“今かよ”という顔をして私を怪訝に見やる彼。


いやいや、知ってて当然みたいな反応されても困るんですけど?

私、自分の年齢なんて伝えてないし、あなたの年齢も知らないです。


「も、もしかして私が店内であの同僚の人と話しているうちに油断させて知らぬ間に個人情報を抜き取っ――」

「……」

「や、冗談です、よ?」


そんな本気で蔑んだ目で見なくたっていいのに。

わざわざ突っ込むのも億劫だったのか、面倒臭そうに「ハァー」とわざとらしく大きなため息を吐く紫苑を見て、さすがの私もむっとしてしまい唇の先を尖らせた。


「LIME」

「ライ――ああ!そうだ、私、誕生日登録してる」

「そう。でも俺は載せてねぇし、未來が俺の歳を知らなくても不思議じゃねぇけど」

「……っ!」


そこで唐突に私の名前を再び呼び捨てて話す彼に、また心臓がどきりと跳ねる。


別にそういうんじゃないけど!

ただ不意打ちはやめてほしいっていうか。こんなド級のイケメンに名前呼ばれる経験なんて、この約30年の冴えない人生において1回あったかないかくらいなんだから!


「お前って、そもそも彼氏とかいなさそうだなと思ってこの提案したけど、マジで男の影のおの字もなさそうだな」


は!?

なんか今さらっとすごい失礼なこと言われた気がする!

気がするっていうか言われた!!


私は即刻ヤツの顔へと振り向いて、吸い込まれそうなほどに美しい黒真珠のごとく、艶深い瞳を睨みつける。


「どういう意味!!」

「どういう意味も何も、そのままの意味。ピュアで可愛いな~って」

「か、かわ……かわい、い!?」

「……あー、あほらし」


!!!


突然にっこりとご褒美みたいな極上スマイルをサービスしたかと思えば、その数秒後には冷徹無慈悲な真顔になって、呆れ返るように肘をつく彼の姿に、私は違う意味でわなわなと顔を熱くする。


やっぱりこの男――いけ好かない!!!


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