エリート狼営業マンの甘くてズルい魅惑の罠
私が玄関のドアを開けるとそこにいたのは――
「どうも!この度はご依頼ありがとうございまーす!ヨコヤマ引越しサービスの横山想太郎です!」
屈託のない爽やかな笑顔を浮かべた、私より何歳か年下に見える若い青年だった。
「想太郎、忙しいトコ、わりぃな」
「紫苑さんー!いやいや全然!紫苑さんがウチをホームリンクさんに紹介してくれたおかげで、めっちゃ新規の顧客増えてますもん!感謝しかないっすよ!」
「俺は使える業者を紹介しただけで、その契約が今も途切れてねぇのはお前んトコの実力だろ」
部屋の奥から姿を現した紫苑に、青年――想太郎さんはキャップを脱いで太陽みたいな笑顔で頭を下げる。
“ホームリンク”というのは、紫苑が勤めている不動産仲介会社の名前だ。
会社のコネなんて言ってたけど、紹介したのは紫苑本人だったのね。
「未來。コイツが今回お前の引越し作業を手伝ってくれる、ヨコヤマ引越しサービス代表の横山想太郎だ。起業して3年しか経ってねぇしまだ会社の規模も小せぇけど、コスパの高い良い仕事するヤツだから」
「今日はよろしくお願いします。日生未來です」
「こちらこそよろしくお願いします!本来は作業員2名体制なんすけど、紫苑さんは学生時代に一時期アルバイトで作業員経験あって慣れてるんで手伝ってもらう代わりに相場の半額で対応させていただきます!」
「ええ!?い、いいんですか!?」
想太郎さんは人好きのする明るい笑顔で「はいっ」そう元気よく頷いたものの、続けざまに「オレが答えるのも違うか」照れ臭そうに頭を掻いて、向かいの紫苑にペコリと首を垂れる。
「いいんだよ、想太郎相手じゃねぇとこんな無茶も通らねぇし」
「そ、そうだよね。想太郎さん、ありがとうございます。あと紫苑もありがとう……!」
「ん」
紫苑はあんまり響いてなさそうな素っ気ない表情で軽く答えると、「さっさと始めっぞー」なんて言ってまた部屋の奥へ戻って行った。