今更だけど、もう離さない 〜再会した元カレは大会社のCEO〜
「ベビーシッターさんと拓也君がそこのマンションに帰ってくのを見たんだけど、何階? 友達もあそこに住んでるのよ」
「あ、6階です」
「6階なんだぁ、周りは一戸建てが多いから眺め良さそうだね。旦那さんは何やってる人なの? あそこ、結構高かったでしょう?」
「会社の用意してくれた家だから、買った訳じゃないんで……」
「へー、あそこを社宅にするなんてリッチな会社だね。どこにお勤めなの?」
プライベート過ぎる踏み込んだ質問に、瑞希は困惑する。あまり長く関わると何をどこまで聞いて来られるか分からない雰囲気だ。まだ堂々と答えられることはそれほど多くはないので、話をすり替えたりと曖昧に誤魔化し続けた。
「あっ、拓也、ここで靴は脱いじゃダメよ。お砂入っちゃった?」
砂場の真ん中に座り込んで靴を脱ごうとしている息子に気付いて、拓也を膝の上に乗せて靴の中に入り込んだ砂を出してやる。結果的に茉莉華ママの話が中断されてホッとした。
丁度ブランコが空いたようなので、拓也を誘って砂場から離れると、以降は二人だけで公園遊びを満喫した。まだまだ話足りなかったのか、砂場の方からチラチラと茉莉華ママの視線を感じることはあったが、子供を置いてこちらに来る訳にはいかない。砂遊びに集中している茉莉華ちゃんに感謝だ。
他の親子とも遊具で一緒になれば多少の会話はしたが、他のママ達は常識的な距離を保ってくれていたので、どうやら茉莉華ママだけが特殊だったようだ。当たり前だけれど、普通の人はいきなり父親の勤務先なんて聞いてはこない。
よく見ていると、茉莉華ママ達がいる砂場に近付いていく親子は全く居ないので、みんな一度は彼女の質問攻めの餌食になった経験があるのかもしれない。声を掛けられない距離を保って遊んでいるように見える。
――公園デビュー、怖すぎる……。
親でもないのに祥子はいつもこの中に入って拓也を遊ばせてくれているのかと思うと、全く頭が上がらない。
他のママ達から近くの別の公園や児童館の情報が聞けたので、今度からはそちらへ行くようにしようと心に決める。休みの日まで余計な気を使いたくはない。
昼前までたっぷり遊んで帰宅した後、拓也はご飯を食べるとすぐに眠気からグズり出した。リビング横の和室に布団を敷いて、しばらく一緒に横になりながら髪を撫でてあげるだけで簡単に眠ってしまった。
子供が眠っている内にやっておきたいことは山ほどある。けれど気付けば瑞希自身もそのまま眠り落ちてしまい、結局は家のことは何も出来ずに終わった休日だった。先に起きた子供に揺り動かされて目が覚めた時にはビックリしたが、連勤明けで疲れていた身体は随分とすっきりして軽くなった気がする。たまにはこういう休みがあってもいいかもしれない。
「あ、6階です」
「6階なんだぁ、周りは一戸建てが多いから眺め良さそうだね。旦那さんは何やってる人なの? あそこ、結構高かったでしょう?」
「会社の用意してくれた家だから、買った訳じゃないんで……」
「へー、あそこを社宅にするなんてリッチな会社だね。どこにお勤めなの?」
プライベート過ぎる踏み込んだ質問に、瑞希は困惑する。あまり長く関わると何をどこまで聞いて来られるか分からない雰囲気だ。まだ堂々と答えられることはそれほど多くはないので、話をすり替えたりと曖昧に誤魔化し続けた。
「あっ、拓也、ここで靴は脱いじゃダメよ。お砂入っちゃった?」
砂場の真ん中に座り込んで靴を脱ごうとしている息子に気付いて、拓也を膝の上に乗せて靴の中に入り込んだ砂を出してやる。結果的に茉莉華ママの話が中断されてホッとした。
丁度ブランコが空いたようなので、拓也を誘って砂場から離れると、以降は二人だけで公園遊びを満喫した。まだまだ話足りなかったのか、砂場の方からチラチラと茉莉華ママの視線を感じることはあったが、子供を置いてこちらに来る訳にはいかない。砂遊びに集中している茉莉華ちゃんに感謝だ。
他の親子とも遊具で一緒になれば多少の会話はしたが、他のママ達は常識的な距離を保ってくれていたので、どうやら茉莉華ママだけが特殊だったようだ。当たり前だけれど、普通の人はいきなり父親の勤務先なんて聞いてはこない。
よく見ていると、茉莉華ママ達がいる砂場に近付いていく親子は全く居ないので、みんな一度は彼女の質問攻めの餌食になった経験があるのかもしれない。声を掛けられない距離を保って遊んでいるように見える。
――公園デビュー、怖すぎる……。
親でもないのに祥子はいつもこの中に入って拓也を遊ばせてくれているのかと思うと、全く頭が上がらない。
他のママ達から近くの別の公園や児童館の情報が聞けたので、今度からはそちらへ行くようにしようと心に決める。休みの日まで余計な気を使いたくはない。
昼前までたっぷり遊んで帰宅した後、拓也はご飯を食べるとすぐに眠気からグズり出した。リビング横の和室に布団を敷いて、しばらく一緒に横になりながら髪を撫でてあげるだけで簡単に眠ってしまった。
子供が眠っている内にやっておきたいことは山ほどある。けれど気付けば瑞希自身もそのまま眠り落ちてしまい、結局は家のことは何も出来ずに終わった休日だった。先に起きた子供に揺り動かされて目が覚めた時にはビックリしたが、連勤明けで疲れていた身体は随分とすっきりして軽くなった気がする。たまにはこういう休みがあってもいいかもしれない。