今更だけど、もう離さない 〜再会した元カレは大会社のCEO〜
「由依も言ってたんだけど、田上って人と結婚したの?」
お腹にいた子の父親が伸也だということを知っている二人は、瑞希の名札の見慣れない苗字に困惑しているようだった。あの後、別の出会いでもあったのだろうかと。
「ううん、田上は母の実家の苗字。一時的に養子縁組してたことがあって、名札はその頃のままになってるだけ。今は相沢に戻ってるよ」
「そう、なんだ……」
複雑な顔をした二人に、瑞希は慌てる。今も一人で苦労しているのではと余計な心配をかけてしまったみたいだ。
「伸也も帰国してすぐに会いに来てくれたから、私も子供も大丈夫」
「安達さん、海外に行ってたの?」
「うん、ロスに経営者修行に行かされてたんだって。空港着いてすぐに荷物を盗まれて、どうにもならなかったって」
何それ、間抜けにも程がある、胡散臭い、と今度は疑いの目に変わってしまった二人へ、瑞希は小声で伸也の継いだ会社名を伝える。メディアでCMをバンバンと派手に流すような会社ではないが、まあ普通に社会人をしていれば耳にすることがある社名だ。
驚いて口をポカンと開いたまま固まる沙月に反して、綾香はスマホを取り出して冷静に検索し始める。
「ほんとだ、代表取締役CEO安達伸也って書いてある。え、ほんとにあの安達さん?」
「あ、写真もあるよ……うわ、安達さんだ」
会社案内のページに貼られていた伸也の顔写真に、二人揃って声を上げている。
まだ一緒には住んでないけど、今は伸也が用意してくれたマンションに住んでいると言うと、二人は瑞希の言葉が嘘や強がりではないとやっと信じてくれたようだった。
「心配かけて、ごめんね。今はもう何の問題も無いから」
「ううん、私達の方こそ、辛い時に助けてあげられなくて、本当にごめんね」
今の瑞希の連絡先を伝えると、二人はようやく安心した顔を見せた。やっぱりちゃんと話を聞こうと思った時、すでに瑞希の携帯番号は通じず、家を訪ねても知らないと言われるし、気付いた時には連絡手段が無くなっていた。だから瑞希を見かけたと由依から聞いた時、仕事を休んででも会いに行かなきゃと思ったのだと言う。
「また今度、息子の顔を見に来て」
二人を店の入り口まで見送ると、瑞希は笑顔で手を振った。
お腹にいた子の父親が伸也だということを知っている二人は、瑞希の名札の見慣れない苗字に困惑しているようだった。あの後、別の出会いでもあったのだろうかと。
「ううん、田上は母の実家の苗字。一時的に養子縁組してたことがあって、名札はその頃のままになってるだけ。今は相沢に戻ってるよ」
「そう、なんだ……」
複雑な顔をした二人に、瑞希は慌てる。今も一人で苦労しているのではと余計な心配をかけてしまったみたいだ。
「伸也も帰国してすぐに会いに来てくれたから、私も子供も大丈夫」
「安達さん、海外に行ってたの?」
「うん、ロスに経営者修行に行かされてたんだって。空港着いてすぐに荷物を盗まれて、どうにもならなかったって」
何それ、間抜けにも程がある、胡散臭い、と今度は疑いの目に変わってしまった二人へ、瑞希は小声で伸也の継いだ会社名を伝える。メディアでCMをバンバンと派手に流すような会社ではないが、まあ普通に社会人をしていれば耳にすることがある社名だ。
驚いて口をポカンと開いたまま固まる沙月に反して、綾香はスマホを取り出して冷静に検索し始める。
「ほんとだ、代表取締役CEO安達伸也って書いてある。え、ほんとにあの安達さん?」
「あ、写真もあるよ……うわ、安達さんだ」
会社案内のページに貼られていた伸也の顔写真に、二人揃って声を上げている。
まだ一緒には住んでないけど、今は伸也が用意してくれたマンションに住んでいると言うと、二人は瑞希の言葉が嘘や強がりではないとやっと信じてくれたようだった。
「心配かけて、ごめんね。今はもう何の問題も無いから」
「ううん、私達の方こそ、辛い時に助けてあげられなくて、本当にごめんね」
今の瑞希の連絡先を伝えると、二人はようやく安心した顔を見せた。やっぱりちゃんと話を聞こうと思った時、すでに瑞希の携帯番号は通じず、家を訪ねても知らないと言われるし、気付いた時には連絡手段が無くなっていた。だから瑞希を見かけたと由依から聞いた時、仕事を休んででも会いに行かなきゃと思ったのだと言う。
「また今度、息子の顔を見に来て」
二人を店の入り口まで見送ると、瑞希は笑顔で手を振った。