恋とエラーと私のエゴ
少し気まずい沈黙が訪れる。先に口を開いたのは聖夜のほうだった。
「ねぇあおは知ってた?臨夜に好きな子いたの。」
「知らない。そんな素振りなかったもん。」
「だよねぇ……。」会話はすぐに途切れてしまう。
私は課題を終わらすためにノートに視線を落とす。カリカリとシャーペンの音だけが聞こえてくる。一通り終わったので、教材を片付けようとすると、聖夜が突然、
「……あお、別に今ぐらい泣いてもいいんだよ?」と、机に突っ伏しながら顔を上げ目線だけを合わせて言う。
「どうしてそんなこと言うの?泣くことなんてないよ?課題も終わったし。」私は笑顔で答える。
「だってあお、臨夜のこと好きだったでしょ?多分幼稚園の時から。」いつもよりはっきりと喋る聖夜の姿は臨夜に似ている。どうしてこんな時に臨夜に似てるの?どうしてそれを知ってるの?どうして気づいてしまったの?いろんな疑問が頭に浮かび、こらえていた涙が自我を持ったように流れていく。ぼやける視界を私にはどうすることも出来なくてただただ彼に対する思いをあふれさせる。
「ほら、やっぱり。誰もいないんだしそのまま泣いてていいよ、僕あおのこと待っててあげるから。」
「……っどうして、……なん、で…っ」
まともに話すことも出来ない私を前に聖夜は優しく微笑んでいる。聖夜の笑みはたまに何を考えているのかわからない。
「どうしてっていうのは臨夜のこと?それともあおが臨夜のこと好きなの知ってたこと?もし後者だったら秘密。」そう言いながら人差し指を口に当てる。やっぱり彼は臨夜とは違う。
「今だけは臨夜のことを考えるのはやめよ。」
「…………うん。」そんな会話を最後に私は泣き疲れて寝てしまった。
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