キミのために一生分の恋を歌う -first stage-
入り口のケヤキ並木を通り過ぎ、私はいつものように公園の真ん中辺りにある噴水池を目指す。
夏の朝と言えど、東京はたくさん人がいるから、みんな同じように思い思いにウォーキングしている。その中のひとつの意味の無い記号として埋もれられることに、私はいつだって安心する。

「あ、小夏だ! おはよう」
「すみちゃん、麦〜!! 今日も元気だね」

散歩の途中で近所の幼なじみ、すみちゃんとコーギー犬の麦に会った。これも大体いつもの事。週に半分くらいはこうしてお散歩中の2人に出会える。

「麦〜今日も可愛いね〜〜〜よしよしよし」

私は今日も全力でお腹を見せてくれて、撫でられ待ちをしている麦を思い切りモフる。

「小夏はほんとに麦が好きだよね」
「うん、ほんとに好き! 私の家に貰っちゃいたいくらい」
「ダーメ、ていうか小夏は喘息持ちじゃん」
「好きなのに病気とか関係ないから」
「はいはい」

なんて。本当は気にしてるから家にはペットが居ないんだけどね。

「ところで小夏、今日は学校来るの?」
「え? なんで? 普通に行くよ」
「だってなんか体調悪そうだし。通知表貰うだけだし休んだら」
「え〜なになに心配してくれてるの? こんなのいつものことだから平気」

麦も心配だと言わんばかりに私の手をペロペロとなめる。
私も麦の目を見て、大丈夫だよと呟く。

「……まぁ基本小夏は何言っても聞かないから。とにかく無理しちゃだめだよ。じゃあまた学校で」
「うん、また後でね」

手を振って、すみちゃんたちと別れると5分くらいで目的地である池についた。
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