キミのために一生分の恋を歌う -first stage-
会計をする前にトイレに寄り外に出ると、たまたま諏訪野さんが近くを歩いていたので、ちょっとだけ声をかけた。

「諏訪野さん。もうお帰りなんですか」
「あー小夏。今日は僕元々外来担当の日じゃないから」
「そうだったんだ。なんかごめんなさい」
「ううん大丈夫。それに他の仕事もたまってるからね」
「頑張ってください」

一礼して、帰ろうとすると腕を掴まれる。

「ほっそいなぁ。本当にご飯食べてる?」
「一応は。どうしたの?」
「明日のプール、無理しないでね」
「多分諏訪野さんが想像するような本気のやつじゃないよ。すみちゃん家の別荘のプール」
「別荘!? 本当にお嬢様なんだねぇ」
「ふふ。見た目によらない?」
「どうかな。でも安心はしたかな。あ、でもあんまり可愛くするのも禁止」
「何それ」
「今日みたいな雰囲気にしてると、色々心配」

色々って何だろうって思ったけど。
あえて何も聞かずにいた。

「すみちゃんと話せたら、またすぐに諏訪野さんに連絡する」
「うん待ってるから。楽しんでおいで」

私から連絡するの、ちょっと緊張するけど。
ちゃんと伝えたいから頑張ろう。
私は軽く頭を下げると、諏訪野さんと分かれた。そのまま会計と薬局に寄り、家に帰るバスに乗った。
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