キミのために一生分の恋を歌う -first stage-
「もう大丈夫そうだね」
「あの……ご迷惑おかけしてすみませんでした。なんとお詫びすれば良いやら」
「何もしてないし詫びなんて要らないよ。それより君の名前はなんて言うの?」
ここで美深という苗字を知られると何かと面倒なことになりそうだと思い、私は下の名前だけ名乗ることにした。
「……小夏です」
「小夏ちゃんか。高校生? 」
「はい、今高2です」
「そっかぁ。いいね若いね〜」
その言い方があまりにおじさん臭くて私はぷっと吹き出した。
「あ、今オヤジ臭いって思ったでしょ」
「ふふ、はい、すみません」
「僕27だし! ギリギリ大丈夫だと自分では思ってるんだけど。まぁいいや、元気になったみたいでよかった」
「はい、ありがとうございます!」
彼は笑顔で頷いてくれる。その表情を見るととても温かな気持ちになる。
「僕は諏訪野晴っていうんだ。bihukaって歌手……さっき君が歌ってたやつ。最近すごく流行ってるから聴いてるうちに好きになってさ。君の声がbihukaにあまりにもよく似てるから声かけちゃった」
「その、あんまり大きい声出してたつもりはなかったんですけど、耳障りだったらすみません」
「いや、小さい音も聞き取っちゃうのは職業病かな。全然うるさくなんかなかったよ」
「すみません……」
「なんで謝るの? すごく素敵な歌声だったよ。でも今日はお疲れ様会は欠席して無理せず家で休んだ方がいいよ」
「はい、ありがとうございました」
私は立ち上がり深々と頭を下げると、彼は今度は引き止めることなく笑顔で手を振り見送ってくれた。私も感謝の気持ちを込めて軽く手を振り返す。
感謝こそすれど、この都会の東京で、きっともうこの人に会うことはないんだろう。そう思うとまた少しだけ胸が苦しくなった。
「あの……ご迷惑おかけしてすみませんでした。なんとお詫びすれば良いやら」
「何もしてないし詫びなんて要らないよ。それより君の名前はなんて言うの?」
ここで美深という苗字を知られると何かと面倒なことになりそうだと思い、私は下の名前だけ名乗ることにした。
「……小夏です」
「小夏ちゃんか。高校生? 」
「はい、今高2です」
「そっかぁ。いいね若いね〜」
その言い方があまりにおじさん臭くて私はぷっと吹き出した。
「あ、今オヤジ臭いって思ったでしょ」
「ふふ、はい、すみません」
「僕27だし! ギリギリ大丈夫だと自分では思ってるんだけど。まぁいいや、元気になったみたいでよかった」
「はい、ありがとうございます!」
彼は笑顔で頷いてくれる。その表情を見るととても温かな気持ちになる。
「僕は諏訪野晴っていうんだ。bihukaって歌手……さっき君が歌ってたやつ。最近すごく流行ってるから聴いてるうちに好きになってさ。君の声がbihukaにあまりにもよく似てるから声かけちゃった」
「その、あんまり大きい声出してたつもりはなかったんですけど、耳障りだったらすみません」
「いや、小さい音も聞き取っちゃうのは職業病かな。全然うるさくなんかなかったよ」
「すみません……」
「なんで謝るの? すごく素敵な歌声だったよ。でも今日はお疲れ様会は欠席して無理せず家で休んだ方がいいよ」
「はい、ありがとうございました」
私は立ち上がり深々と頭を下げると、彼は今度は引き止めることなく笑顔で手を振り見送ってくれた。私も感謝の気持ちを込めて軽く手を振り返す。
感謝こそすれど、この都会の東京で、きっともうこの人に会うことはないんだろう。そう思うとまた少しだけ胸が苦しくなった。