隣人はだらしない‥‥でも
突然割り込んできた声に、
目を閉じて頭を下げていた私は
ゆっくりと体を起こして振り向いた


誰‥‥‥?


真っ白なロングシャツにキナリ色の
パンツを合わせた長髪の綺麗な人を
見つめると、最初は中性的な美しい
顔立ちをされていたし鎖骨下辺りまで
ある髪で女性かと思ったけど、
すぐに男性だと気づいた。



『すみません、ここは私のほうで
 対応しますので、お仕事に戻られて
 ください。』


『えっ?あ、そうですか‥‥。』


スタッフの方がその男性と何かを
話された後去ってしまい、慌てて
追いかけようとしたら後ろから腕を
掴まれてしまった


「あ、あの‥すみません私急いでて。
 離していただけませんか?」


『どんな理由であれ、遅刻して
 来たことには変わらない。
 君だけ特別扱いしてしまったら、
 永遠に他の参加者も受け入れる
 事になる。社会人なら尚更
 そんなことは分かってるはずだ。』


ドクン‥‥


低めの落ち着いた声で、
真っ直ぐ私と視線を合わせ話す声に、
分かってはいるけどツラクて、
また涙が溢れ出した。


「‥社会人でも夢見たかったんです‥‥
 すみません‥もう諦めますから。」


『えっ?あ、おいっ!!』


深々と頭を下げてから、
恥ずかしさと悔しさでその場から
逃げるように走り去ると、
泣きながら家まで帰った。


「ウッ‥‥ウゥ‥‥ヒック‥‥」


どんなに仕事がツラクても、
デザインしてる時だけは自分らしく
笑顔になれたし、呼吸がラクに出来た。


働きながらも、
アマチュアのコンテストの開催を知り、
未経験や会社などの無所属でも参加
出来るなら頑張りたいと向かって
来たからこそ、参加すら出来ないことに
涙が止まらないのだ



あの男性が言ってることも墓穴を
掘られたくらい正しかったからこそ、
あの場に乗り込んで大声を出した
自分が余計に情けないと思える


せっかく声をかけてくださったのに、
失礼な態度をとってしまったな‥‥


みんなオシャレをして参加してたのに、
1人だけ疲れた顔で、着古した
スーツ姿で行った時点で場違いだ


はぁ‥‥‥また0からだ‥‥


仕方ない‥‥
私がチャンスをダメにした。
上司からの無理な仕事を断れなかっ
た弱い私のせいだから。


その日は涙が止まっても、思い出す
度にまた目元が熱くなりこの結果を
受け入れるまで眠れず、朝方になって
ようやく睡魔に襲われ眠りについた
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