隣人はだらしない‥‥でも
眠い頭をフル回転させ女の子を
案内すると、寝室で着替えをしてから
急いで洗顔、歯磨きを終わらせ、
キッチンでお湯を沸かし始めた。


「あの、珈琲か紅茶は飲めますか?」


『ありがとうございます。
 ではかなり甘くして
 いただいてもいいですか?
 苦いのは飲めませんので。』


「あ、はい。分かりました。」


姿勢正しく地面に正座をした彼女を
ミルクティーを淹れながらそっと
影から眺める



デザイン事務所って‥‥
どうしてそんな人がわたしのとこに
急に来たのだろう‥‥


昨日は参加すら出来なかった
大会のことを思い出し少しだけ
また目頭が熱くなってしまったけど、
お待たせしてしまっているので、
急いで用意をした。


「すみません‥お茶菓子もなくて。」


テーブルに甘めで作ったミルクティーが
入ったカップをそっと置くと、
両手でそれを手にすると何度もフゥー
っと冷ましながら美味しそうにそれを
飲んでくれた。


『ありがとうございます。
 喉が乾いていたのでとても美味しい
 です。では早速ですが本題に
 入りたいと思いますがお話しても
 宜しいですか?』


「あっ、はい‥大丈夫です。」


対面に同じようにして座ると、
彼女がニコリと微笑んでから、
鞄からファイルに挟まれた1枚の 
紙をテーブルに置いた。


『細川さん、昨日会場に、
 作品のデータを置き忘れて
 帰られましたよね?』


えっ!?


あ‥‥ショックでそんなことすら
分からないまま過ごしていたけど、
もしかしたらステージに置きっぱなしに
してしまったかもしれない‥‥


『ふふ、いいんですよ。おかげで
 良いものが見れましたから。』


えっ?


テーブルの上の紙を私の方に
そっと差し出されたので、
よく分からない状況だったけれど
紙を手に取り目を通した。



「‥‥‥‥‥‥っ!あのこれって
 ど、どういうことですか!?」



少しだけ紙を持つ手が震えてる‥‥
武者震いとは少し違うかもしれないけど
体から何かが込み上がるような
なんとも言えない感情だ


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細川 茅葵 様


失礼かと思いましたが、
デザインを拝見させていただきました。
可能でしたらアシスタントからに
なりますが、一緒に働きませんか?
オフィスの上に一室空きがありますので
住み込みという形でサポートして
頂けると幸いです。
よいご返事をお待ちしております。


FTFデザイン
山岡 亜耶


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