隣人はだらしない‥‥でも
『いいんじゃない?
 ただどんな仕事も自己満足して
 終わらなければさ‥‥
 大事なのは受け取る側の満足感を
 満たした後なら自己満足は
 十分してもいいんだから、その
 順番だけ間違えてはいけないだけ。
 俺は少なくとも茅葵が作るデザイン
 好きだよ。』


えっ?


クルッと体を椅子ごと回転させ
後ろを向くと、そのまま私の腰を抱き
グイっと引き寄せた。


『まだまだ技術的なことは足りない。
 でも君にしか作れない作品なのは
 間違いないよ。‥‥‥だから
 いつか自分の殻を破って抜け出せる
 日まで見守らせてくれないか?』


山岡さん‥‥


仕事のこととなると、やっぱり
一言ひとことが脳にまで響き、
尊敬以上の言葉が今は思いつかない


山岡さんのデザインは大好きだ‥‥


出来上がるのも楽しみだし、
クライアントさんとの打ち合わせや、
おもてなしなどにも人柄が出ていて
そう言う人が作る作品をもっと見たいし、側で学びたい。


「‥‥下着姿で言う台詞じゃ
 ないんですけどね‥‥」


上の服は借りていたものを着せたけど、
下は相変わらずボクサーパンツのみで
そのギャップに思わず笑ってしまう


この人は、この完璧じゃない姿なのが
いいのかもしれない。


容姿は完璧なのにね‥‥


『もしかして俺のこと好きになった?』


「は?そうですね‥‥ご想像にお任せ
 します。さ、私は掃除するので
 そろそろ帰ってくださいね!」


『えっ?本気?』


「本気もなにもいつまでいるんです?
 私は掃除して出掛けたいんです!」


綺麗な美しい顔が、信じられないくらい
酷く歪んだ後、笑う私を見て呆れた
ように笑ってくれた。


『ま、そういうところが茅葵なんだな。
 仕方ないから許すよ‥‥。
 この先もずっと長い時間一緒に過ごす
 んだから今日で終わりじゃないし。』


「ッ!何言ってるんですか。
 いい加減早く下も履いてください!」


『えー、今更?俺がいつも服着ないの
 知ってるでしょ?』


「‥‥‥」


私の上司は素晴らしい人。
でも、私が好きになった人は
とてもだらしない人。


私を引っ張り上げてくれたこの手を
忘れないで、これからも隣でこうして
過ごしていければそれで十分だ。



「山岡さん」


『ん?なに?』


「‥好きですよ‥私も。
 ‥‥とりあえずはLIKEの意味で。」


『‥フッ‥それはたまらなく嬉しいね。
 どちらにしろ好きってことだから』



END
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