隣人はだらしない‥‥でも
次の場所が私にとって今以上に
ブラック企業になるかもしれない
不安は正直拭えない‥‥


それでも、訪れたチャンスを逃して
このまま今の会社にいるのとどちらかを
選んでというなら、迷わずこちらに
進んでみたいと思えたのだ



「眠いけど‥‥やることが
 沢山だ‥‥頑張らないと‥‥」


それから勤めていた会社に
一身上の都合という形で、退職願いを
出し、今月いっぱいで離職することが
可能となり、賃貸会社や引っ越し業者の
手配などバタバタと3週間が
あっという間に過ぎていくことになった



山岡さんのオフィスに電話をした際、
出張でいらっしゃらなくて、
代わりの方に伝言をお伝えしたところ
後日メールで一度訪問して欲しい旨が
書かれていたので、有給を使い、
平日の午後に訪ねることにしたのだ



‥‥‥‥‥緊張する
今までは大きな企業に勤めていた
ものの、逆に目の前に見えている
小さいけれどオシャレな雰囲気
が出ている建物の方が緊張感が
増してしまう。


ふぅ‥‥‥


溜め息にも似た深呼吸をすると、
両開きのキャラメルカラーのドアを
前にインターホンを鳴らした。


ピンポン



『はい、FTFデザインです。』


「あ、あの‥来月からお世話になります
 細川です。」


『どうぞ入ってきてください。』


鍵が開けられる機械音が聞こえた後、
そっと扉を開けると、すぐ右側に
かなり広々としたスペースがあり、
数人の人がデスクに座って作業
されていたり、電話をしたりしていた


音楽もかかってて、大きな窓から
入る日の光のおかげでとても明るくて
オシャレな空間だ‥‥


少しだけ場違いな所に来てしまったかも
しれないと不安になっていると、
目の前の1番大きなデスクに座って
いた人が立ち上がり私に手招きをした



えっ!?‥‥‥あの人って‥‥
あの時の!?


私が会場で泣きながら
頼み込んでいた時に声をかけて
くれた長髪の男性だったことに驚く


あんなに厳しいことを言われたのに、
どうして私なんかを採用してくださったのか益々分からなくなったのだ



『細川さん、待ってたよ。
 改めまして代表を務めています
 山岡 亜耶です。今日は来てくださり
 ありがとうございます。』


トクン
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