あの日交わした約束

頑張ると決めても怖さが減る訳ではない。


震える左手を陽向先生が優しく包んでくれた。



「ありがとう。」



陽向先生の体温が伝わって少し安心する。



私の血管は見えにくくて採血しにくいらしい。


だから、何回も失敗されて痛い思いをしたことが


ある。でも、陽向先生が1回で終わらせると約束


してくれたから、信じてみたいと思った。



落ち着いて深呼吸。


そう自分で意識をし続けた。




駆血帯が巻かれ、


「消毒するから少し冷たいよ。」


その言葉と同時にスースーする感覚が伝わる。



心臓がすごくドキドキしてるのが分かる。


ついに針が刺されると思うと緊張して、怖くて


仕方なかった。



「深呼吸そのまま続けててね。


ごめんね、チクッとするよ。」



その声が聞こえたあとすぐに痛みが走った。



「いっ、、(涙)」



少し声は出てしまったけどなんとか堪えた。


涙目になったけど、泣かないように頑張った。



「よし。


痛いとこ終わったよ。もう少しで終わるからね。」

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