お菓子の国の王子様
雅さんが車の中でちらちらとぬいぐるみを見ているので、これについて簡単にお話しする。少し恥ずかしいけれど。


私たち家族は数年ごとに他国へ引っ越していたため、ペットを飼うことができなかった。


フランスに住んでいたある日、犬を飼いたいと思っていた私に、父さまがこの黒いプードルのぬいぐるみを渡してくれた。
両耳に結ばれた赤いリボンは姉の圭衣ちゃんが結んでくれ、首輪のタグには4歳の私が自分で犬の名前を書いた、「Bon Bon」と。


話を聞き終えた雅さんと目が合い、二人で大笑いした。


Bon Bonとはフランス語でお菓子の意味。


この一年後、私は東京で迷子になり、私の王子さまのお兄ちゃんに出会う。
そして、二人でお菓子屋さんを開くことを約束し、お兄ちゃんのお嫁さんになることを約束した。


あれから15年以上が経ち、何の因果か、私は今「Bon Bon」というお菓子を扱う会社で働いている。
そして、Bon Bonの社長との同居が始まる。
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