お菓子の国の王子様
座ったままお辞儀をし、手土産を渡す。


「急なお願いにもかかわらず、お時間をいただき、誠にありがとうございます」


俺はここ1ヶ月間の彼女との隣人とのトラブルについて説明し、解決策として、職場から近く、セキュリティーも整っている俺のマンションでの同居を提案した。


やはり父親は渋い顔をし、腕を組んで黙っている。一方、母親は満面の笑みを浮かべている。俺は彼らを安心させるために、さらに続ける。


「そしてこちらが弁護士の伊集院涼介立会のもとで作成した契約書です。もちろん、お二人が安心できるのであれば、私の身辺調査を行っていただいても構いません。美愛さんの部屋は内側からも鍵をかけることができます。ご家族の皆様をいつでも歓迎いたしますので、ぜひ遊びにいらしてください」


母親は賛成のようだが、父親は流暢な日本語で問いかけた、俺のメリットはと。


現在の会社のプロジェクトについて、家政婦のおばあちゃんが辞めたことを踏まえ、美愛ちゃんには俺の食事と健康管理をお願いすることを伝えた。

それでも、父親は良い返事をくれない。
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