お菓子の国の王子様
「お姉さんは今、日本にいらっしゃいますか? できれば、今日こちらに来ていただけますか?今、ここで電話をお願いします」


美愛は小さなため息をつき、震える手でケータイのボタンを押した。


「もしもーし、美愛ちゃん?」

「............」

「美愛ちゃん、どうしたの? 大丈夫?」

「Ich habe eine Bitte: Könntest du zu meiner Firma kommen?/お願いがあるの、私の会社まで来てくれるかな?」


電話を終えた美愛は、雅を見ずに弱々しく伝える。


「6時前には来られるそうです......他に何かありますか?」


録音機能を停止した雅は、首を振る。


「ありがとう、花村さん......」


雅がまだ言いかけようとしたが、やるせない思いを抱えた美愛は、素早く一礼して社長室を後にした。
< 130 / 196 >

この作品をシェア

pagetop