お菓子の国の王子様
やっぱり、この同居には無理があったのかも?
悲しいな、疑われてしまったの。
淋しいな、雅さんと離れるの。


気がつくと、マスターが湯気の立つココアのカップをテーブルに置き、まだ一口も飲んでいない冷めてしまった紅茶のカップを下げていた。


「少しでも心が温まるといいな」


マスターはそう言って、優しく私の頭を撫でてくれた。


泣きながらカップを手に取り、温かいココアを飲む。濃厚なチョコレートと生クリームに私の涙が混ざったココアは、今まで飲んだ中で一番心をほんわかさせてくれた。


ココアを飲み干す頃には、涙もすっかり止まり、時間は7時をとっくに過ぎ、もうすぐ8時になる。慌ててお会計をしようとしたところ、ママさんに抱きしめられた。


「辛かったり、悲しくなったらいつでもおいで」


止まっていたはずの涙が再び溢れ出す。ママとマスターはお金を受け取らない。
< 137 / 280 >

この作品をシェア

pagetop