お菓子の国の王子様
無言のまま帰宅した私たちの中で、最初に言葉を発したのは雅さんだった。


「部屋に行って、お風呂の準備をしておいで。俺が湯加減を見てくるから、とにかく早く温まらないと」





着替えを持って浴室へ向かう。
部屋で外し忘れたネックレスを比較的長い洗面台カウンターの隅に置いた。


髪と体を洗った後、ゆっくりと湯船に浸かる。


いつもはミルク系の入浴剤を使っているが、雅さんがラベンダーの入浴剤を入れてくれた。
美しい紫色の湯船が、ラベンダーの香りで満たされている。確か、ラベンダーにはリラックス効果と安眠効果があるはず。


雅さんのさりげない心遣いが嬉しかったが、それでも私の心はまだ重い。


これからどう接すればいいの?
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