お菓子の国の王子様
ドライヤーの音が止まり、彼がそっとブラシで髪をとかしてくれる。


「まだ座っていて」


雅さんはそう言い残して、キッチンへ向かった。


怖いな、今度は何を言われるんだろう?


うつむいて膝の上に置いた手を見つめていた私の目の前に、雅さんがマグカップを差し出してくれた。


「はい、どうぞ」

「......ありがとうございます」


カップの中にはホットミルク。


「いただきます」


一口飲んですぐに気づいた。


あっ、これは私が作ったラベンダーシロップが入っている!


思わず隣に座っている雅さんの方に振り向くと、彼は悲しげな表情で微笑んだ。
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