お菓子の国の王子様
「やっと俺と目を合わせてくれたね」


ハッと息を飲んだ。
そういえば、社長室を出てから一度も雅さんの顔をまともに見ることができなかった。
私を探して公園に来てくれたとき、髪を乾かしてれたとき、ホットミルクをもらったとき。


「ぅ、ご、ごめんなさい」


大粒の涙があふれ、今にも消え入りそうな声で囁いた。


雅さんは私の手からカップを取り、ローテーブルに置いた後、包み込むように私を抱きしめてくれた。


「美愛ちゃんは何も悪くない。むしろ、俺の方こそごめん。俺たち、今日のことを話し合うべきだけど、明日にしよう。美愛ちゃんが無事に戻ってきたから。ここに帰ってきたから、今はそれだけで十分だ」


私は自分のことばかり考えていて、雅さんの気持ちを少しも考えなかった。
こんなに心配してくれていたなんて。
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