お菓子の国の王子様
俺は走ってミッドタウンに戻り、9時まで営業しているデパ地下で美愛ちゃんを探した。


頭に浮かぶのは、彼女と過ごした日々のこと。今日の夕飯は何だろうと楽しみにしながら、玄関を開ける自分。帰宅すると、『おかえりなさい』と笑顔で出迎えてくれる彼女。家では髪の毛を結ばない彼女が、料理をする前にささっとゆるめのお団子ヘアにする姿が好きで、よく見ていた。週末に一緒に作ったラビオリは、とても美味しかったな。本屋でお互いに好きな本を読みながら、のんびりとした時間を過ごしたり、夕食後に散歩がてらコンビニのスイーツを買ったり。たまに寝坊して、眠そうに『おはようございす』って言う姿が可愛らしかった。すれ違うとき、彼女から俺と同じシャンプーの香りが漂ってくると、心が躍ったものだった。
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