お菓子の国の王子様
さらに近づき、もう一度彼女の名前を叫び思い切り抱きしめた。


「やっと見つけた......無事でよかった!」


10月半ば、日中はまだ過ごしやすい陽気だが、朝晩は肌寒く感じる。コートを持っていない彼女の体と髪は、冷たくなっていた。


「こんなに冷たくなって」


俺はスーツの上着を脱ぎ、急いで彼女にかける。美愛ちゃんはうつむいたまま、何も言わない。


もう絶対に君を離さない。


彼女の冷たくなった指を絡めて、手を繋いだ。


「俺たちの家に帰ろう」


俺たちは黙ったままマンションに戻った。
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