お菓子の国の王子様
キッチンの片付けを終え、ドライヤーを洗面台に持っていくと、カウンターの隅に赤い物が目に留まった。手に取ってみると、それは小さな赤いベルと牛のチャームが付いたネックレスだった。


湯船に浸かりながら、俺が気になっていた美愛ちゃんと家族が言った言葉を思い出す。


『ある人からもらったあのキャラメルによって、悲しかった状況からなぐめられたような感覚です。元気をもらった気がします。安心するんです、精神安定剤みたいに。だから、今でも辛い時や悲しい時には、特にその人がそばにいてくれるように感じるから......このキャラメルには癒される感じです』

『でも、私一人でお菓子屋さんになっても意味がないから......』

『父さま......じゃなくて、父から』


お母さんの久美子さんの言葉。

『やはり、あなたとはまたご縁があったのですね』


お姉さんの圭衣ちゃんの言葉。

『あなたは昔、約束したことを実行すればいいだけ』
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