お菓子の国の王子様



コーヒーの良い香りが鼻をかすめた。
ニット帽を被った優しい笑顔のマスターが、カウンターでコーヒーを淹れている。


店内は読書ができる程度の明るさで、かすかにジャズが流れていた。


店内を見渡すと、りりちゃんはすでに来ていて、奥のテーブル席で手を振ってくれている。


「りりちゃん、待った?」

「私もさっき着いたところ。お腹が空いているから先に注文しちゃったんだけど、美愛は何にする?」

「お昼はまだだから、ミックスサンドと紅茶にしよう。」


注文した品が届き、私たちは食事をしながら会話を楽しんだ。


「ところで、今日呼び出したのはね、美愛に勧めたい仕事があるからなの。私の教え子が数年前に設立した輸入菓子を扱う会社で、秘書を探しているの。『元祖慶智の王子達』って知ってる?」


「アイドルグループか何か?」
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