お菓子の国の王子様
「ふぅ、終わった」


時刻は4時50分。


たぶん、これで大丈夫だよね......


数回見直した後、作成した資料のサンプルを印刷し、緊張しながら社長に提出。


「うまくできているね、ありがとう。うちのコンピューターで何か困ったことはなかった?」

「ありませんでした。私もそのソフトを使っているので、大丈夫でした。他に何かご用はありますか?」

「今日はもうないかな......後は大和から指示をもらって」


軽く会釈をして退室した。


よかった〜、最初の仕事を無事にこなすことができて。





5時半の終業まで、大和副社長からいただいた秘書マニュアルと取引先の資料に目を通す。マニュアルに記載されている内容は、これまで父の会社で行っていたこととほとんど変わらず、この会社で使用しているソフトウェアも同じなので安心。
取引先の資料には、会社名や社長名、役員名、住所、連絡先番号に加え、プライベートな情報も掲載されていた。


『S.Gストーレッジの営業部長に初孫の男の子が生まれた』や『天地運輸の社長は辰屋の豆大福が好物』など、こちらの方は覚えることが多いが、もうすぐ無事に初日を終えられそうだ。

< 39 / 169 >

この作品をシェア

pagetop