お菓子の国の王子様
「あはは〜、うん、いいよ。大きくなったらね!」
「約束ね、指切りげんまん......」
ピピピピピー、けたたましい音のアラームが鳴り響き、私は夢から目を覚ました。
カーテンの隙間から、黄色がかった淡紅色の光が差し込んでいる。
アラームを止め、ベッドの上で大きく伸びをし
ゆっくりと起き上がった。
カーテンと窓を開け、6月の晴れた朝の空気を肺いっぱいに吸い込む。
不意に、長めのネックレスに付いている赤いベルと牛のチャームを握りしめた。
あの時にもらったキーホルダーが壊れてしまったため、赤いベルと牛のチャームを長めのチェーンに付けてネックレスにし、肌身離さず持ち歩いている。
またあの夢を見た。
夢と言っても、私が実際に体験したこと。
同じ夢を繰り返し見るのに、次第にお兄ちゃんの顔がぼやけてきている。