お菓子の国の王子様
ただ、雅は大和の提案に対してあまり乗り気ではなかった。
過去に数回、期間限定で秘書を雇い、社長室で業務を行ってもらったが、皆、雅に見とれて業務をおろそかにしたり、やたらとボディータッチをするなどの逆セクハラがあったため、契約を破棄せざるを得なかった経緯がある。
しかし、半日同じ部屋で仕事をしていたが、美愛は必要以外は雅に話しかけず、黙々と自分の仕事をこなしていた。


30分の残業を終えた美愛は、雅に呼び止められた。


「花村さん、ちょっといいかな? 話ししたいことがあるのだが.....そんなに時間はかからない」

「はい、大丈夫です」

「急なお願いで申し訳ないのだが、明日の土曜日に予定がなければ、出社して手伝ってもらいたい仕事があるんだ。朝9時から始めて、3時までには終わらせる予定。もちろん、休日特別手当も出る。どうかな?」

「特に予定がないので、お手伝いできます」

「助かるよ。9時にここ社長室ね。スーツではなく、カジュアルな服装でいいから。それから、今日の総務の件についてなんだけど......」



雅は、一瞬美愛の顔が曇り、うつむいたのを見逃さなかった。
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